フォシーガの心不全への効果について、ここまで解説したことをまとめました。
前々回のメトホルミンを扱ったブログで「歳以上のご高齢の患者さんはシックデイリスクが若い患者さんより高いため、メトホルミンは慎重投与、歳以上の方に新規で開始することは避けている」と記載しましたが、この阻害薬については、後述の通り心臓・腎臓といった高齢者で機能低下を起こしやすい内臓に非常に良い効果がもたらされることが実証されているため、ある程度お元気な高齢者では慎重に投与するケースもあります。
フォシーガと心不全に関連してよくある質問にお答えしていきます。
また、DELIVER試験は、2型糖尿病の有無を問わず、左室駆出率が40%超の心不全患者の治療として、フォシーガの有効性をプラセボとの比較で評価するようにデザインされた、国際共同、無作為化、二重盲検、並行群間比較、プラセボ対照、イベント主導型第3相試験。フォシーガは、基礎治療[SGLT2阻害薬の併用を除く、糖尿病や高血圧などのすべての併存疾患に対する地域の標準治療]への追加治療として1日1回投与された。同試験は、駆出率が40%超の心不全患者を対象に実施された臨床試験で、6,263例の患者が無作為化された。主要評価項目は、心血管死、心不全による入院、または心不全による緊急受診のいずれかが最初に発生するまでの期間。
2015年に発表されたEMPA-REG OUTCOME試験では、心筋梗塞や脳卒中の既往のある2型糖尿病患者に対して、既存の治療薬にSGLT2阻害薬であるエンパグリフロジンを併用することにより総死亡を32%、心血管疾患による死亡を38%、および心不全による入院を35%、低下させることができたという報告でした。これらのリスク低減効果は種類により差はありますが、他のSGLT2阻害薬でも認められています。
フォシーガ(一般名:ダパグリフロジン)の適応としては、以下が認められています。
フォシーガは、左室駆出率が低下した心不全(HErEF)の患者を対象に行ったP3試験「DAPA-HF試験」で、標準治療への上乗せで主要複合エンドポイント(心不全の悪化/心血管死)をプラセボに比べて26%低下。慢性腎臓病患者を対象とした同「DAPA-CKD」でも、主要複合エンドポイント(腎機能の悪化/心血管死または腎不全による死亡)を39%抑制しました。いずれも、2型糖尿病の有無に関わらず有効性が示されており、「心・腎保護薬」としての期待が高まっています。
どちらも降圧薬の一種で、血管を拡張させ血圧を下げる効果があります。それに加えて心臓に負担をかけるアンジオテンシンIIという物質を抑制し、心臓の拡張や肥大を抑制する効果があります。「目に見えない治療」の代表です。代表的な薬剤としてACE阻害薬にはエナラプリル、イミダプリル、ARBにはテルミサルタン、バルサルタンなどがあります。
[PDF] 慢性心不全治療薬としての SGLT-2 阻害薬について
DAPA-HF試験は、2型糖尿病合併の有無にかかわらず、HFrEF患者4,744例を対象とし、フォシーガ10mgを1日1回、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACEi)またはアンジオテンシン受容体遮断剤(ARB)から成る標準治療(SoC)に追加投与したときの効果を、プラセボとの比較により評価するようデザインされた、第3相国際多施設共同並行群間無作為化二重盲検比較試験。主要複合評価項目は、心不全の悪化(入院またはそれに相当するイベント[心不全による緊急受診])の初回発生までの期間または心血管死だった。フォローアップ期間の中央値は18.2ヵ月。
NOBUヘルシーライフ内科クリニックでは腎臓病の診療を得意分野の一つとしてお
り、SGLT-2阻害薬『フォシーガ』の使用も積極的に行っております。腎臓病の方・腎
臓病ではないのかとご心配な方はいつでもご相談ください。
SGLT-2 阻害薬のフォシーガ錠が 2020 年に慢性心不全の効能が追加承認され、翌年にジ
心不全になると循環する体液の量が減り、血圧が下がってくるので、これを修正するために、体液の量を増やして、血圧を上げるような変化がおきます。
国内の患者数は、慢性心不全が130万人、慢性腎臓病が1330万人と推定されています。両疾患への適応拡大によって、SGLT2阻害薬の市場も大きく拡大しそうです。
この薬剤により心臓に備わっている利尿ホルモン(ナトリウム利尿ペプチド)を増やすことができ、心臓保護につながるという仕組みです。 ..
なお、フォシーガは日本では、2型糖尿病、1型糖尿病、慢性心不全(ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)、慢性腎臓病(ただし、末期腎不全または透析施行中の患者を除く)を効能・効果として承認を取得している。添付文書には、効能・効果に関連する注意として、「5.5 左室駆出率の保たれた慢性心不全における本薬の有効性及び安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与すること」が記されている。
心臓を休ませて心臓を元気にします。 少ない量から始め、血圧・脈拍 ..
β遮断薬は心臓の交感神経を抑え、心臓への過剰な刺激を抑制します。心臓を休めて負荷を軽減し、心機能の維持・改善に働きます。「目に見えない治療」の代表です。心不全治療のキードラッグと言ってもいいですが、容量を増やしすぎると心拍出量が下がって低拍出症候群という非常に危険な状態となるため、患者さまに適した容量を見極めがとても重要です。代表的な薬剤としてカルベジロール、ビソプロロールがあります。
フォシーガとは?(SGLT-2阻害薬:腎臓病の新しい治療薬として)
なお、フォシーガは日本では、2型糖尿病、1型糖尿病、慢性心不全(ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)、慢性腎臓病(ただし、末期腎不全または透析施行中の患者を除く)を効能・効果として承認を取得している。添付文書には、効能・効果に関連する注意として、「5.5 左室駆出率の保たれた慢性心不全における本薬の有効性及び安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与すること」が記されている。
イラストで学ぶ医学!「心不全で腎機能が低下する理由とは?」心臓と腎臓の関係をわかりやすく解説!
前述のACE阻害薬/ARBと同様に、心臓の拡張や肥大を抑制する効果があります。
収縮能の低下した心不全に対してはACE阻害薬/ARB、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬を可能な限り全て導入し、副作用のない範囲で最大容量を目指していくのが基本的な方針です。
心不全の治療薬は長らく新しいものが登場しませんでしたが、ここ数年で複数の新薬が登場し効果が実証されています。
無症候性心不全患者におけるSGLT2阻害薬ダパグリフロジンの心臓周囲脂肪減少 ..
英国グラスゴー大学医学部循環器学教授であり、Institute of Cardiovascular and Medical Sciencesの副所長も務めるJohn McMurray氏は、次のように述べている。
「1万1,000例を超えるすべての範囲の左室駆出率の心不全患者を対象とした当患者レベルのメタ解析で、ダパグリフロジンは心血管死および心不全による入院のリスクを低下させることが明らかになりました。左室駆出率の測定結果が得られていなくてもただちに治療を開始できることから、この結果は臨床現場で果たす有益な役割を支持するものです」。
心筋梗塞後の方や開心術後のような治療後の患者さんにおきましては、筋力が落ちないように心臓リハビリテーションを行っていきます。 ..
さてもともと糖尿病治療薬であるSGLT2阻害薬ですが、まずは心血管病のある糖尿病患者にSGLT2阻害薬を投与すると心血管死亡、心不全入院を有意に改善したというデータが得られました。
次の段階として、糖尿病の有無にかかわらず心不全の治療薬になりうるかどうかの臨床試験が行われました。心不全患者で標準治療が行われている群にSGLT2阻害薬を投与すると、糖尿病の有無にかかわらず心血管死と心不全入院は有意に減少した、との大規模臨床試験結果が相次いで発表されました。
糖尿病患者でなくても心不全治療にSGLT2阻害薬が有効ということが分かったのです。そして本邦および海外の心不全診療ガイドライン(医師が病気を治療するときの指針)において、SGLT2阻害薬は標準的または基本的治療薬として考慮されるべき、と位置づけられました。
以前のブログ(慢性腎臓病の新しい治療薬 ~SGLT2阻害薬~)で、紹介しましたSGLT2阻害剤のダパグリフロジン(フォシーガ ..
ナトリウム利尿ペプチド(ANP、BNP、CNPなど)は、心不全になるとより多く分泌されるホルモンの1つで、血管を広げたり、余分な水分やナトリウムを尿中に排出させたりして、循環させなければいけない体液量を減少させて心臓の負担を減らします。
コラランは、心臓のペースメーカー電流である過分極活性化陽イオン電流(If)を阻害することで、心臓 ..
SGLT2阻害薬は、2型糖尿病の治療に用いられる薬剤ですが、最近では心不全の治療にも使用されるようになりました。SGLT2阻害薬は、腎臓のSGLT2(腎臓でグルコースを再吸収するトランスポーター)を阻害することで、尿中にグルコースを排泄する作用があります。そのため、血糖値を下げるだけでなく、体重の減少や血圧の低下、脂質代謝の改善など、多くの効果が報告されています。
心不全に対するSGLT2阻害薬は、心筋そのものを保護する効果、血圧を下げることで心臓の負担を減らす効果、腎機能を改善・維持することで心臓の負担を減らす効果があります。また利尿作用があるため、従来の利尿薬を減らすことができる症例があります。
心臓は、全身へ血液を送るポンプのような働きをしています。そのポンプ機能が低下 ..
ではなぜ糖尿病の薬が心不全に対して効果があるのか、その作用機序は確定的なものはまだありません。SGLT2阻害薬が有する利尿・体液減少作用、軽度の血圧低下作用、腎負荷減少作用、血中ケトン体濃度上昇作用、エリスロポイエチン増加作用、交感神経や一酸化窒素活性に対する作用など複数の作用機序が考えられています。
心臓リハビリテーションで予後が良くなり、生活の質(QOL)が向上する
心不全とは一般的には「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」と定義されています。高齢者がちょっと動いてフーフーするのは 心不全のことが多いです。原因としては高血圧、冠動脈硬化症、弁膜症、心筋症、不整脈、加齢その他が複合的に加わり心不全になります。糖尿病の合併症としての大血管病変も心不全に悪影響を与えます。一旦心不全を発症し入院すると、その後徐々に心不全入院の頻度が増えていき、最終的には死亡します。
2019/8/31(土)-9/4(水)、パリにて開催中のヨーロッパ心臓病学会 ..
昨年、SGLT2阻害薬として初めて慢性心不全での承認を取得し、慢性腎臓病への適応拡大を申請した「フォシーガ」。同薬を開発したアストラゼネカの緒方史子氏(執行役員 循環器・腎・代謝/消化器事業本部長)と矢島利高氏(メディカル本部 循環器・腎・代謝/消化器疾患領域統括部 統括部長)に、その意義や心・腎領域の事業戦略について聞きました。
体にたまった余分な水分等を尿として排出することで、心臓の負荷を軽減します。 ..
慢性心不全では昨年11月、フォシーガがこのクラスの薬剤として初めて承認を取得し、ジャディアンスも適応拡大を申請。慢性腎臓病では、フォシーガが昨年12月に申請を済ませ、ジャディアンスも臨床第3相(P3)試験を行っています。カナグルは糖尿病性腎症を対象にP3試験を実施中です。
心機能が低下しているのであれば、まずは心臓の収縮力を増強させる薬剤や心臓 ..
心臓がパンパンに腫って水が溜まる心不全の治療として、少し詳しく説明すると、1980年代までは利尿剤、ジギタリスが中心でした。1990年にACE阻害薬投与で心不全の生存率が著明に改善することが示されました。その後β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の有効性が示され心不全の治療はACE/ARB+β遮断薬+MRAの3剤併用が基本治療となりました。(第一次パラダイムシフト)そして近年ACE/ARBにかわってARNIが誕生し、ARNI+β遮断薬+MRA+SGLT2阻害薬の4剤併用療法(第二次パラダイムシフト)が確立したのです。