1)クラリスロマイシンとの薬物間相互作用(外国人データ)34)


胃酸分泌抑制薬としては,プロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor:PPI),H2受容体拮抗薬(histamine H2 receptor antagonist:H2RA),そしてカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(potassium-competitive acid blocker:P-CAB)がある。これらはヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)の除菌療法や消化性潰瘍,胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease:GERD)等の酸関連疾患に対して広く使用されている。しかし患者は,時に他の併存疾患のためにいくつかの薬物を服用している場合があり,そうした薬物と胃酸分泌抑制薬との間に薬物間相互作用が起こることがある。
本稿では,胃酸分泌抑制薬が関わる薬物間相互作用について概説する。


相互作用」の「併用禁忌」の項の記載を一部改訂し、以下のように改めました。 [クラリスロマイシン錠200mg・50mg小児用「NPI」共通]

次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

薬物間相互作用は,大きく4つに分類される。①薬効に影響する場合,②吸収に影響を与える場合,③代謝が阻害・促進される場合,④排泄が阻害・促進される場合がある。胃酸分泌抑制薬はそのいくつかの局面で併用薬に影響しうる(図1)。

相互作用; 副作用; 適用上の注意; その他の注意; 薬物動態; 臨床成績; 薬効薬理 ..

次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

カリウムイオン競合型アシッドブロッカーであるボノプラザンもクロピドグレルとの相互作用が報告された

パリタプレビル・リトナビルを投与中の患者(「相互作用」の項参照)

H. pyloriの除菌療法は,アモキシシリンやクラリスロマイシンといった抗菌薬に,胃酸分泌抑制薬であるPPIやP-CABのボノプラザン(以下VPZ)が用いられる。胃酸分泌抑制薬で胃内pHが高まることによって,H. pyloriはより増殖するようになり,抗菌薬への感受性が高まると考えられる1)。PPIよりもVPZのほうが胃酸分泌抑制効果は高く,そのため,VPZを除菌の補助役として用いると胃内での抗菌薬の安定性が高まり,また,H. pyloriの感受性も高まることにより,H. pyloriの除菌率も向上する2)。逆に,PPIの効果が不十分になりやすいCYP2C19のextensive metabolizerでは除菌率が低下する3)

1) 乾正幸, 大和田進, 乾純和ほか. ラテックス免疫比濁法を用いた血清Helicobacter pylori抗体検出キットの判定保留域(陰性高値・陰性低値)の解析. 日本消化器病学会誌 2017:114:1968-1977. 【横断研究】
2) 権頭健太、高橋悠、山道信毅ほか. H. pylori診断におけるH.ピロリ-ラッテクス「生研」及びH.ピロリIgG「」の有用性の検討. 日本消化器がん検診学会雑誌 2017:55:547-553. 【横断研究】
3) 乾正幸, 大和田進, 乾純和ほか. ラテックス免疫比濁法を用いた血清Helicobacter pylori抗体検出キットの実地臨床における有用性の検討-EIA法およびCLEIA法キットとの比較解析-. 日本ヘリコバクター学会誌2017:19:33-42. 【横断研究】

相互作用 ································· 23

尿を用いる抗体測定検査では、凍結保存後に偽陰性が、タンパク尿がある場合には偽陽性となる場合があります。特にタンパク尿の頻度の高い若年者では注意が必要です。EIA法により尿中抗体測定を行った場合は結果が数値で表されますが、血清抗体のEIA法による測定とは異なり、半定量的試験です。保険診療上も半定量的試験とされており、保険点数も血清抗体と異なっています。したがって尿中抗体測定は感染診断には有用ですが、EIA法による測定であっても、血清抗体のように治療前後の数値の比較による除菌判定には使用できません。

栄研のEプレートについで使用される機会が多いのは、同社が同じ抗原から作成したLZテストです1)。LZテストは測定が簡便であるラテックス法を用いて抗体価を測定します。そのほかにもデンカ生研、富士フィルム和光純薬からも血清抗体測定キットが発売されています2, 3)。これまでの報告では、どの方法も実臨床における感染診断の精度は十分と考えられます。しかし、血清抗体測定法はキットによって使用される抗原が違うので、診断精度は測定対象の感染率、胃粘膜萎縮の程度に影響されます。したがってEプレート以外の測定キットを胃がんリスク評価・H. pylori検診に使用する場合には、内視鏡など画像所見も参考にし、慎重に判断することが必要です。


クラリスロマイシン等の強いCYP3A阻害剤との相互作用(併用注意)

15.2.2. 〈アモキシシリン水和物、クラリスロマイシン〉ラットにアモキシシリン水和物(2000mg/kg/日)、ランソプラゾール(15mg/kg/日以上)を4週間併用経口投与した試験、及びイヌにアモキシシリン水和物(500mg/kg/日)、ランソプラゾール(100mg/kg/日)、クラリスロマイシン(25mg/kg/日)を4週間併用経口投与した試験で、アモキシシリン水和物を単独あるいは併用投与した動物に結晶尿が認められているが、結晶はアモキシシリン水和物が排尿後に析出したものであり、体内で析出したものではないことが確認されている。

薬物相互作用が起こる可能性のある薬剤を併用することにより、作用が増強 ..

ワルファリン内服時にH. pyloriの除菌薬を内服するとワルファリンの抗凝固作用が増強される可能性があります。そのため、適応を十分に検討した上で、安全に注意して行う必要があります。

ボノプラザンを加えるのは、胃酸を抑制してクラリスロマイシンの抗菌作用をいっそう高めるためです。 ..

高齢者における副作用の頻度は10%程度であると報告されています。大きな持病が無ければ高齢であることを理由に除菌を控える必要はありません。

[PDF] プロトンポンプインヒビター- ボノプラザンフマル酸塩錠

治療中止となるような強い副作用(腹痛を伴う頻回の下痢、下血、皮疹、咽頭浮腫、発熱など)は2-5%と多くはありません。しかし強い副作用(腹痛を伴う頻回の下痢、下血、皮疹、咽頭浮腫、発熱など)が出現した際には、直ちに除菌薬の内服を中止し、医師の診察を受けましょう。
なお、出現した副作用が軽微な場合には、治療が終了すれば、副作用も自然に改善することが多いため、可能な限りお薬の内服を継続しましょう。

本邦におけるHelicobacter pylori除菌治療の問題点

プロトンポンプ阻害薬(PPI)やクラリスロマイシン(CAM)、メトロニダゾール(MNZ)はワルファリンの代謝酵素を介する薬物間相互作用によって、ワルファリンの代謝をおくらせ、結果としてワルファリンの効果が強まります1)。なお、Vonoprazanとワルファリンの相互作用に関してはデータが不十分です。また、アモキシリン(AMPC)、CAM、MNZは腸内細菌に影響し、それらはビタミンKの産生低下につながり、結果としてワルファリンの効果が増強されます。従って、H. pyloriの除菌薬はワルファリンの抗凝固作用を増強させることとなり、注意が必要です1)。添付文書上では、除菌薬の何れも併用禁忌ではなく併用注意薬であるため2)、慎重投与は可能ですが、基本的には除菌療法の適応とリスクベネフィットバランスを考慮して除菌を行うかを決定すべきと考えます。除菌を行う場合には、十分に患者に説明したうえでICを取得後、INR等でモニターしつつ、慎重に行わざるをえないと考えます。

ボノプラザンは主として肝薬物代謝酵素CYP3A4で代謝され、一部

鳥肌胃炎はH. pylori感染による過剰な免疫応答であり、特に若年者に好発する胃炎の一形態です。内視鏡では前庭部から胃角部の小結節隆起として捉えられ、色素撒布にて明瞭となります。隆起の中心には白色陥凹を認め、羽をむしり取った鳥の肌のように見えます。病理学的にはリンパ濾胞の著明な増生が認められます1)。鳥肌胃炎は若年者胃癌や未分化型胃癌や印環細胞癌の発生母地と報告されており2)-4)、除菌が推奨されます。除菌成功により小隆起は経時的に平坦化・消失することが多いです5)が、除菌後の胃癌発生の頻度やリスクファクターについては報告されていません。現時点では正確なfollowの間隔などは明らかではなく、除菌時の年齢、萎縮の程度、胃癌家族歴などを総合的に考慮して症例毎に検討することが望ましい対応と思われます。

[PDF] ボノプラザンフマル酸塩錠、日本薬局方アモキシシリンカプセル

CAMはCYP3A4の阻害薬であり、同じ酵素やトランスポーターで代謝・輸送される薬物の動態に影響します1)。同酵素で代謝される薬物との相互作用に十分注意が必要です2)。エルゴタミンはCAMと併用禁忌です。エルゴタミンとの併用ではその血管収縮作用を増強させます2)。併用禁忌薬には、この他に、ピモジド、チカグレロル等、7剤あります。併用注意薬には、カルバマゼピン、テオフィリン、アトルバスタチンカルシウム水和物、シンバスタチン、ベンゾジアゼピン系薬、カルシウム拮抗薬(ニフェジピン、ベラパミル等)、ワルファリンカリウム等があります。スタチンは、併用で血中濃度が上昇し、横紋筋融解症が生じることがあります。ワルファリンではINRの上昇、カルシウム拮抗薬では徐脈や低血圧のリスクがあります2)。ジゴキシンは、腸内細菌に影響し、不活化が抑制されたり、輸送阻害が生じ、血中濃度が上昇します3)。スルホニル尿素系血糖降下薬は、機序は明確ではないですが、CAMとの併用により血中濃度が上昇する可能性があります3)。これらを含め、併用注意薬は30剤以上あります。除菌対象患者さんが他の医薬品を服用中の場合では、添付文書で確認したり、薬剤師に相談することが必要です。

16.7.1 ボノプラザン、クラリスロマイシン併用時の薬物動態

受付時間:平日午前9時00分~午後5時30分
(土、日、祝日、当社休日除く)

(1)ボノプラザン、クラリスロマイシン併用時の薬物動態 11)

絶対に飲酒が禁止なのは「2次除菌療法」の期間です。2次除菌で使用するメトロニダゾールはジスルフィラム様作用(嫌酒薬)を高い確率で引き起こすことが分かっています。2次除菌中にアルコールを摂取すると、体内にはアセトアルデヒドがいつも以上に蓄積し、頭痛や嘔吐、腹痛、を引き起こします。「酷い二日酔い」と同じ状況になると思って頂ければわかり易いですね。

II.本邦におけるHelicobacter pylori除菌治療の問題点

これらの薬物を服用中の症例の除菌では、CAMとの併用を避ける必要があります。可能なら、除菌薬服用期間中は、それらの薬物の服用を中止します。もし中止が不可能ならば、CAMの使用を避けなければなりません。従って、CAMではなくMNZを用いた2次除菌レジメで除菌を行う必要がありますが、MNZも併用禁忌や注意が多い薬物ですので相互作用には十分に注意する必要があります。

-CAB)や抗菌薬(アモキシシリン、クラリスロマイシン、メトロニダゾール)にも、薬物間

なお、選択肢①は地域によっては保険診療では行えません。また選択肢②は全くの自費診療となります。いずれも対応可能な医療機関は限られます。ご希望の患者さんは、受診前に医療機関への問い合わせをお勧めします。なお、ペニシリンアレルギーの方への除菌法、選択肢①については当院でも対応しています。

2014年12月26日付でプロトンポンプインヒビターのボノプラザンフマル酸塩が製造販売承認さ

文献
1) H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2016改訂版.日本ヘリコバクター学会ガイドライン作成委員会編、先端医学社,東京,2016.
2) 古田 隆久, 杉本 光繁, 山出 美穂子, 他: Helicobacter pylori感染症診療のPitfall(第3回) 合併症を有する患者、併用薬のある患者に対するHelicobacter pylori除菌療法. Helicobacter Research 2013;17:284-90.
3) クラリス錠200 添付文書.2019年4月改訂.大正製薬株式会社.