= デキサメタゾン(商品名デカドロン他) → 0.5~0.75mg = ベタメタゾン(商品名リンデロン他) → 0.5~0.75mg
これまでのCOVID-19に対する吸入ステロイドの有効性を検証した報告では主に,明らかな肺炎のない症例や,外来で管理できる症例に限った研究が多い。前述の「STOIC試験」でも酸素化の保たれている軽症例が対象となっているが,「PRINCIPLE試験」ではCOVID-19の重症化リスクである高齢者や併存症のある症例が対象となっており,高リスク群に対する効果が示されたことは,大変期待できる結果であった。ただし慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)に対する吸入ステロイドは,新型コロナウイルスが気道上皮に感染する際に必要となるACE2受容体の発現を減少させ,COVID-19の感染予防に効果を示すと言われている。「PRINCIPLE試験」でもブデソニド吸入群に現喫煙者や過去喫煙者が46%含まれていることや,喘息やCOPD症例が9%含まれていることは差し引いて考える必要がある。また,ブデソニド吸入はタービュヘイラーⓇというデバイスを用いて薬剤を投与する必要があるため,呼吸促拍している症例や人工呼吸管理の重症例に対しては,吸入ステロイドの投与は現実的には難しい。
ステロイド投与が必要になる場合も。今回、日本鋼管病院薬剤部と田中希宇人氏協力のもと作成したデキサメタゾン換算表と患者向けスライドを紹介。
その他の吸入ステロイドとしては,ブデソニド吸入薬(パルミコート®)のCOVID-19に対する有効性が示唆されている。英国・オックスフォードシャーで行われた多施設共同オープンラベル第2相試験「STOIC試験」では,酸素投与が不要で入院を必要としない軽症COVID-19症例を対象にブデソニド吸入の効果が検証された。本研究では,per-protocol集団およびITT(intention-to-treat)集団における,COVID-19による救急受診や入院,自己申告での症状の回復までの日数,解熱薬が必要な日数などが評価された。結果,ブデソニド吸入群が標準治療群と比較して有意差を持ってCOVID-19関連受診を低下(per-protocol集団:1% vs. 14%,ITT集団:3% vs. 15%),症状の回復までの日数の短縮(7日 vs. 8日),解熱薬が必要な日数の割合の減少(27% vs. 50%)を認める結果(図11)22)であった。
処方例
●デキサメタゾン(4mg)1.5錠 分1(朝1.5錠)内服 7~10日間
●プレドニゾロン(5mg)8錠 分3(朝4錠,昼2錠,夜2錠)内服 7~10日間
●デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム6.6mg+生理食塩水100mL 朝1時間 点滴 7~10日間
メチルプレドニゾロンとトリアムシノロンが5倍、デキサメタゾンが25倍、ベタメタゾンが25~ ..
当院(日本鋼管病院/こうかんクリニック)では,筆者と薬剤部で協力してデキサメタゾン6mgと同力価のステロイド換算表を作成し,院内で周知することとした。デキサメタゾンはCOVID-19治療以外でも,たとえば様々な癌腫の治療としても重要な薬剤であり,本当に必要な症例に適正使用されるよう努めた。実際には,プレドニゾロン内服に変更して,多くの症例は乗り切った印象(下記の処方例)がある。
ただし,日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会COVID-19対策タスクフォースが策定した『日本版敗血症診療ガイドライン2020(J-SSCG2020)』の特別編 『COVID-19薬物療法に関するRapid/Living recommendations 第4.1版改訂』(2021年11月公開)では,「中等症/重症COVID-19患者にステロイドパルス療法を行うか?」というクリニカルクエスチョン(CQ)に対し,「酸素投与/入院加療を必要とする中等症患者,ならびに人工呼吸器管理/集中治療を必要とする重症患者に対するステロイドパルス療法については,現時点では推奨を提示しない(no recommendation)」としているので,留意されたい。
デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム (D00975) 薬効分類番号 1315 1329 ATC ..
いずれの研究においてもデキサメタゾンは6mgの固定用量で規定されているのに対し,メチルプレドニゾロンは体重換算で薬剤の投与量がコントロールされている。したがって,実臨床の現場においてデキサメタゾンで治療するにしても,他のステロイド製剤で治療するにしても,体格の大きな若者と体の小さなおばあちゃまとで同量のステロイドで治療するのではなく,年齢や体重を勘案すべきである,と考えている。また長期にステロイドで加療するとなると,消化性潰瘍・血糖値・骨粗鬆症,そしてニ次的なその他の感染症の発症に注意する必要があることは言うまでもない。
デキサメタゾン以外のステロイド製剤のCOVID-19に対するエビデンスは乏しいが,メチルプレドニゾロンの報告をいくつか紹介したい。イランから報告されたランダム化比較試験で,日本での「中等症Ⅱ」以上の酸素投与が必要なCOVID-19症例に対して,デキサメタゾン(6mg固定用量)投与群とメチルプレドニゾロン(2mg/kg)投与群が比較検討された。この研究は86例と少数例での検討であるが,メチルプレドニゾロン投与群では投与5日目,10日目の臨床的な状態がデキサメタゾン群に比べて有意に改善した。また,入院中に死亡した症例を除外した検討では,メチルプレドニゾロン群で入院期間の平均値が7.43日とデキサメタゾン群の10.52日と比較して有意に短いという結果であった。
コルチゾールの各薬理作用に対する代表的コルチコステロイドの力価の換算値を示したもの ..
COVID-19はウイルス感染症であり,発症初期はウイルスの増殖による症状がメインとされている。そのため,ウイルス感染症の発症初期に免疫を強く抑えるようなステロイド治療を行うことは,臨床医としては大変ためらわれる治療である,と当初から考えていた。ここで,聖路加国際病院から報告された,ステロイドで加療されたCOVID-19症例113例の臨床的な後ろ向きコホート研究を紹介したい。この研究では,COVID-19に対してステロイド加療終了後に症状や酸素化が悪化してしまった症例を「リバウンド症例」として定義し,リバウンド症例の特徴やステロイド投与開始日・投与期間についての詳細な検討がなされている。
以上の結果から,実際の現場では酸素投与が必要な「中等症Ⅱ」以上のCOVID-19に対してデキサメタゾン6mg(実際の臨床現場にて点滴でステロイドを投与する場合には,静注用のデキサメタゾン製剤が6.6mg規格のため,6.6mg/日投与されていることが多い)または同力価のステロイドで治療している。逆に,わが国の『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第6.0版』(2021年11月公開)においても,酸素投与を必要としない症例に対してはステロイドを使用すべきではなく,予後をむしろ悪化させる可能性が示唆されている,としている。
ベタメタゾンの立体異性体としてデキサメタゾンがある。 国内及び主要国では ..
日本静脈学会・肺塞栓症研究会・日本血管外科学会・日本脈管学会が発表している『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)における静脈血栓塞栓症予防の診療指針 2021年4月5日版(Version 2.0)』では,酸素投与が必要な「中等症Ⅱ」の症例で“ヘパリンの予防投与を考慮”し,ICU管理や人工呼吸管理の「重症」の症例では“ヘパリン投与を行う”としている。逆に酸素投与が不要な「軽症」「中等症Ⅰ」においては“(基本的には)抗凝固療法は不要”とし,離床・下肢運動・弾性ストッキング・間欠的空気圧迫法などを中心とした理学療法が勧められている。
このような換算表があると、臨床では大変便利です。 それでは、ステロイド ..
COVID-19では経過中に全身性の炎症反応を発現し,広範な肺障害や多臓器不全を引き起こすことが知られている。このような過度の炎症反応を抑える,または予防する目的で,抗炎症薬としてステロイドで加療されることがある。特に酸素投与が必要な「中等症Ⅱ」「重症」に分類されるCOVID-19に対しては,デキサメタゾンによる治療が推奨されている。なお,デキサメタゾンは重症感染症への適応がある。デキサメタゾンをはじめ,COVID-19に対するステロイドのエビデンスについて振り返ってみたい。
プレドニゾロン, ヒドロコルチゾン, コルチゾン, メチルプレドニゾロン, トリアムシノロン, デキサメタゾン, ベタメタゾン
重症化リスクのある酸素投与を必要としないCOVID-19に対してモルヌピラビルとプラセボを比較した「MOVe-OUT試験」において,モルヌピラビル1回800mg 1日2回,5日間経口投与群の入院と死亡の割合をみた重症化率が7.3%と,プラセボ群の14.1%と比較して相対リスクが48%減少したことが報告された。現在,重症化リスクのある酸素投与を必要としない「軽症」「中等症Ⅰ」のCOVID-19症例に対して,症状発現から5日以内の投与が推奨されている。動物での毒性試験において胎児の体重減少や流産,奇形などの影響が報告されているため,妊婦や妊娠している可能性がある女性に対しては投与しないこととしている。
デキサメタゾンプロピオン酸エステル メサデルムクリーム、メサデルムローション.
重症化リスクのある軽症COVID-19症例に対して,ソトロビマブ単回投与群は対照群と比較して,投与29日以内の入院または死亡を85%減少させる結果が報告された。このようなデータから,カシリビマブ/イムデビマブと同様に,重症化リスクのある酸素投与を必要としない「軽症」「中等症Ⅰ」のCOVID-19症例に対して,症状発現から1週間以内での単回投与が推奨されている。オミクロン株に対しても中和活性は保たれ,有効性が期待できるとされている。
コルチゾールの各薬理作用に対する代表的コルチコステロイドの力価の換算値を表 7 ..
外来での重症化リスクのあるCOVID-19症例に対して,カシリビマブ/イムデビマブ単回投与群は対照群に比べ,入院や全死亡を有意に減少させた。また,新型コロナウイルス感染者と96時間以内に家庭内で接触のあった症例を対象にカシリビマブ/イムデビマブ単回皮下投与を行うことにより,COVID-19発症リスクを81.4%減少させるというデータも報告された。以上から,重症化リスクのある酸素投与を必要としない「軽症」「中等症Ⅰ」のCOVID-19症例に対して,症状発現から1週間以内での単回投与が推奨されている。オミクロン株に対しては中和活性が低下しており,オミクロン株に感染していることが明らかな症例に対しての投与は推奨されていない。
副腎皮質ステロイドはホルモンで, 生体の恒常性維持や機能発現に重要な役割 ..
上記の6種類以外にも臨床の現場ではデキサメタゾンや,血栓予防として抗凝固薬のヘパリンを頻用している。なお,COVID-19に対する非薬物療法としては理学療法や酸素療法,挿管/人工呼吸管理や体外式膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation:ECMO)などがある。それだけでも膨大な内容となるため,本稿では割愛する。
ベタメタゾン(リンデロン®)0.5mg, 36〜54時間, 0.6 ..
・酸素投与が必要なCOVID-19症例に対して,ステロイド治療は重要な選択肢となりうるが,そうでない症例に関しては逆効果になることもありうる。当然のことであるが,COVID-19というだけで機械的に治療法を選択するのではなく,ステロイドが必要な症例の選択,投与開始日や投与期間,副作用の管理,その他のCOVID-19治療薬の選択など,症例ごとに繊細かつ十分に検討されるべきと考える。
[PDF] 3. 副腎皮質ステロイド剤(外用薬)のランク分類と副作用・使用方法
・COVID-19は全身性の炎症反応から,広範な肺障害や多臓器不全を起こすことがあり,抗炎症薬としてステロイドが使用される。
・デキサメタゾンが標準治療に比べ死亡率を減少させたことから,酸素投与が必要な「中等症Ⅱ」以上のCOVID-19症例に対する標準治療となっている。
・デキサメタゾン以外にも,メチルプレドニゾロンや,強力なステロイド治療としてステロイドパルス療法でCOVID-19症例に対する効果を検討した報告がある。
・シクレソニドやブデソニドなどの吸入ステロイドによるCOVID-19症例に対する効果を検討した報告があり,シクレソニドは肺炎増悪率が高かったと結論づけられたが,ブデソニドは症状回復までの時間を短縮させた。
ステロイドの内服薬と注射薬は、消化管の吸収に問題がなければ基本的に同量で等価換算になる。 ..
・COVID-19に対する薬剤の検討は世界中で進んでおり,レムデシビル,バリシチニブ,カシリビマブ/イムデビマブ,ソトロビマブ,モルヌピラビルの5種類が2022年1月18日現在,COVID-19に対して日本国内で承認されている。
■レムデシビル:RNA依存性RNAポリメラーゼ阻害薬。肺炎像のある「中等症Ⅰ」以上のCOVID-19症例に,5日間投与することで臨床的な症状の改善が見込める。
■バリシチニブ:JAK阻害薬。レムデシビル投与下で酸素投与が必要な「中等症Ⅱ」以上のCOVID-19症例に,14日以内,バリシチニブを投与することで臨床的な症状の改善が見込める。
■カシリビマブ/イムデビマブ:中和抗体薬。重症化リスクのある酸素投与が不要な「軽症」「中等症Ⅰ」のCOVID-19症例に,症状発現から1週間以内の単回投与で入院や死亡を抑制する。ただし,オミクロン株に対する投与は推奨されていない。
■ソトロビマブ:中和抗体薬。重症化リスクのある酸素投与が不要な「軽症」「中等症Ⅰ」のCOVID-19症例に,症状発現から1週間以内の単回投与で入院や死亡を抑制する。オミクロン株に対しても有効性が期待できるとされている。
■モルヌピラビル:RNAポリメラーゼ阻害薬。重症化リスクのある酸素投与が不要な「軽症」「中等症Ⅰ」のCOVID-19症例に,症状発現から5日以内に内服を開始することで入院や死亡を抑制する。
・上記の5種類以外にも,ステロイドや抗凝固薬,非薬物療法についても知見が集積しており,標準治療につき簡単に概説する(2022年1月21日,抗IL- 6受容体抗体であるトシリズマブが中等症Ⅱ以上のCOVID-19症例に対して追加承認された)。
DIクイズ1:(A)妊娠時に経口ステロイドを変更する理由:日経DI
「ステロイドには、副作用が多い!」という印象をお持ちの方も多いと思いますが、このような副作用のデメリットを差し引いたとしても、それ以上のメリットがあるのです。
ですから、現在でもステロイドが多く使用されているのです。
ステロイドは「両刃の剣」と例えられるように効果も副作用も強力なのですが、むやみにこわがる必要はありません。
当院ではステロイドをより安全に使うため、投与法の工夫や副作用対策として予防薬の投与などを行っています。
たくさんの難治性疾患に対する治療の切り札となってきたステロイドのメリットを最大限に発揮できるよう、薬剤師として患者さんに正しい情報を提供していきたいです。
[PDF] 食品安全委員会動物用医薬品専門調査会 (第201回)議事録
ステロイドは怖い薬だからと、自己判断で飲む量を変えたり、途中で止めてしまったりすると、それによって病状が悪化したり、別の副作用(離脱症状など)を起こしたりする恐れがあります。
必ず、決められた1日量を、決められた期間、きちんと指示通りに服用するようにしてください。それが、ステロイドの副作用を最も少なく抑える、最善の方法です。