レナリドミド水和物はサリドマイド誘導体であり,国内ではデキサメタゾンとの併用において「再発
移植非適応患者に対する標準治療は現在,MPB 療法(MEL, PSL, BOR)もしくはMPT 療法(MEL, PSL, THAL)などであり,40 年以上にわたって標準治療であったMP 療法(MEL, PSL)に比してPFS の延長効果のみでなくOS の延長効果も示されている(,)。米国においてはLEN+少量DEX 併用療法(Ld)の有効性も報告されているが,MP 療法或いはMPT 療法とのランダム化比較試験の結果が未報告であり,厳密な意味で標準治療とは認識されていない。患者年齢や末梢神経障害,血栓症などのリスクや肺の間質影の合併の有無などを考慮して従来のMP 療法などの通常量化学療法の選択肢もある。MPB 療法やMPT 療法では,通常9 コースまで継続することを目標とするが,治療継続期間を比較検討した臨床試験は存在しない。MP 療法で代表される従来の化学療法の場合は,プラトー[安定(SD)/不変(NC)以上の効果判定がなされた時点を規準にしてM 蛋白量等の計測値の変化が±25%以内で3 カ月以上継続した場合]に至るまで継続して治療を終了することが一般的であり,それ以上の治療継続は患者利益に結びつかないことが示されている(,)。また,LEN やTHAL などの免疫調節薬は,DEX との併用により相乗効果が期待できるが,高齢患者に対する大量DEX の投与は感染症や血栓症を誘発することが示されており,年齢に応じた減量が勧められる(,)。移植非適応患者に対する導入療法後の維持療法については,無増悪生存期間の延長効果を示す試験結果があるものの,OS の延長効果を示した大規模試験は少なく,実施する場合は臨床試験の範疇で行うことが勧められる。
ニンラーロは、レナリドミド(レブラミド)とデキサメタゾンを含めた3剤を併用
この中で全身化学療法の対象となるのはCRAB と称される臓器障害,すなわち高カルシウム血症,腎不全,貧血,骨病変(骨髄腫診断事象myeloma defining events:MDE)のうち1 つ以上を有している(症候性)多発性骨髄腫(symptomatic)multiple myeloma であり,M 蛋白量は治療開始の指標としては用いないことに注意が必要である。2015 年に改訂されたIMWG 規準において,myeloma-defining biomarker(SLiM:骨髄中形質細胞≧60%,involved/uninvolved 血清遊離軽鎖比≧100,またはMRI で2 カ所以上の5 mm を超える巣状病変ありのいずれか1 つ以上)を有する場合も(症候性)多発性骨髄腫の範疇に含められた。これらは,従来のくすぶり型(無症候性)骨髄腫の中で2 年以内に80%以上の確率で症候性骨髄腫に移行する可能性の高い病態であるが,myeloma-defining biomarker のみを有しMDE(CRAB 症候)を示さない多発性骨髄腫の中には長期間進展しない患者も一部含まれており,日常診療においては直ちに治療開始すべきか注意深い経過観察を行うかは個別に判断することが望ましい。
症候性骨髄腫に対して患者予後を推定するための病期分類として,血清β2 ミクログロブリン値とアルブミン値のみを用いる国際病期分類(International Staging System:ISS)の使用が推奨される()。プロテアソーム阻害薬や免疫調節薬が使用可能となり,患者予後が著明に改善した時代により即した病期分類として改訂国際病期分類(Revised – ISS:R-ISS)が提唱された。R-ISS は,従来のISS に間期核FISH(interphase fluorescence in situ hybridization:iFISH)法における高リスク染色体異常の有無と,増殖能を反映する血清LDH 濃度を追加した病期分類であり,新規薬剤時代における予後因子としての意義が示されている()。ただし,現時点ではISS やR-ISS に基づく治療の層別化は実施されていない。
ダラキューロ+レブラミド+デキサメタゾン(DLd)併用療法 患者プロトコール
再発・難治例に対しては,初回治療の最終投与日から6 カ月以上経過してからの再発・再燃であれば初回導入療法に対する感受性を有している場合も多く,初回導入療法を再度試みてもよいし,新規薬剤を含む治療レジメンに変更してもよい(,,)。初回治療終了後6 カ月未満の再発・再燃や治療中の進行や増悪の場合,そしてt(4;14)転座などの高リスク染色体病型を有する場合には,新規薬剤を含む救援化学療法の選択が推奨される()。薬剤選択においては前治療レジメンや患者の有する合併症や臓器機能障害の有無などを考慮する必要がある。移植適応のある60 歳未満の患者においては,救援療法が奏効した場合には2 回目の自家造血幹細胞移植併用の大量MEL 療法を行うという選択もある(,)。同様に救援療法が奏効してHLA 適合ドナーがいる場合には,同種造血幹細胞移植という選択肢もあるが,移植後早期の死亡率が高く再発・再燃も高頻度であることから,臨床試験の範疇で行われることが望ましい()。
65 歳未満で重要臓器機能の保持されている初発骨髄腫患者に対しては,効果が迅速で深い奏効を期待でき,かつ自家造血幹細胞採取効率に悪影響を与えない導入療法を施行(,)後,自家造血幹細胞移植を併用した大量MEL 療法を実施することが推奨される(,,,)。移植適応患者に対する導入療法としてMEL などのアルキル化剤やレナリドミド(LEN)の長期投与を施行すると,造血幹細胞採取効率の低下につながることが知られており注意が必要である。推奨導入療法としては,高い奏効割合が期待できるボルテゾミブ(BOR)とデキサメタゾン(DEX)併用の導入療法(BD 療法)があり,3~4 コース施行後に自家末梢血幹細胞採取と保存を行う。より高い効果を期待できる導入療法として,新規薬剤を含む3 剤併用療法であるCBD 療法[BD+シクロホスファミド(CPA)]やBAD 療法[BD+ドキソルビシン(DXR)]があるが,同時に毒性も増強することに留意すべきである。腎障害を伴っていてもBOR は使用しやすい薬剤である。しかし,肺の間質影や末梢神経障害が存在する場合などのBOR による毒性が懸念される場合には,これまで標準的に用いられたVAD 療法(VCR, DXR, DEX)や大量DEX 療法(high-dose dexamethason:HDD)なども選択肢となる。自家末梢血造血幹細胞は,G-CSF 単独またはCPA 大量療法にG-CSF を併用して採取し,CD34 陽性細胞で2×106 個/患者体重(kg)以上の造血幹細胞を得ることを目標とし凍結保存しておく。大量MEL 療法は通常200 mg/m2 を2 日間に分けて投与するが,腎障害がある場合には70%に減量する。2 日目の大量MEL 投与の翌々日に凍結しておいた自家末梢血造血幹細胞を急速解凍して輸注する。早期からの新規薬剤の使用により大量MEL 療法を行うことなく同等の無増悪生存期間が得られるかどうかの臨床試験が複数行われているが,それらの結果が明らかになるまでは大量MEL 療法が65 歳未満の患者に対する標準治療である。1 回目の移植後の効果が最良部分奏効(VGPR)未満の患者においては,2 回目の移植(タンデム移植)を実施することで無増悪生存期間(PFS)や全生存期間(OS)の延長効果が得られることが示されている(,)。しかし最近の欧米の臨床試験では,1 回目の移植後の地固め療法や維持療法として新規薬剤が使用されており,PFS の延長効果に加えて,一部の臨床試験においてはOS の延長効果も示されている(,)。しかし,いずれの薬剤を用いた場合も至適投与法(投与量,投与レジメンや投与期間など)は確立されておらず,臨床試験での実施が望ましい。したがって,日常臨床においての地固め療法や維持療法は,薬剤耐性化や二次がんの発症を含めた有害事象のリスクと患者利益,そして医療経済的な側面をよく考えて実施するかどうかを決定する必要がある。さらに治癒を目指して,自家造血幹細胞移植後に骨髄非破壊的同種造血幹細胞移植(ミニ移植)を実施する戦略も試みられているが,現段階では研究的治療の域を出ず,臨床試験としての実施が推奨される()。
② レナリドミドとデキサメタゾン併用でのヒト多発性骨髄腫由来細胞株(NCI-H929 ..
治療効果判定には,国際骨髄腫作業部会による統一効果判定規準(uniform response criteria)が広く用いられている, 。効果判定に必要な検査項目と判定規準を示す()。臨床試験においては,EuroFlow-NGF(next generation flow)を用いたmultiparameter flow cytometry(MFC)や免疫グロブリン重鎖や軽鎖のVDJ 領域の次世代シークエンス(next-generation sequencing:NGS)によるdeep sequencing を用いた微小残存腫瘍(minimal residual disease:MRD)の意義も検討され, 患者予後の予測に有用であることが示唆されている。さらに骨髄中のMRD と,PET/CT を含む画像診断による残存病変を統合したIMWG MRD criteria も提唱されているが,日常診療で普及しているわけではない。
症候性骨髄腫の前癌病態であるMGUS やくすぶり型(無症候性)多発性骨髄腫は無治療経過観察(watchful waiting)が原則であり,多発性骨髄腫(症候性)に移行した時点で全身化学療法を開始する(くすぶり型多発性骨髄腫:, ,エビデンスレベル1iiA)。MGUS は,年約1%の割合で多発性骨髄腫や全身性アミロイドーシスへ進行することが知られており,10 年後で12%,20 年後で25%,25 年後で30%の患者で疾患の進行が認められる。疾患進行のリスク因子として,①血清M 蛋白量1.5 g/dL 以上,②非IgG 型,③血清遊離軽鎖(κ/λ)比異常の3 因子が示されており,進行割合を予測するモデルが提唱されている()。くすぶり型多発性骨髄腫から(症候性)多発性骨髄腫あるいは全身性アミロイドーシスへの進行は,診断後の5 年間は年10%,次の5 年間は年3%,10 年を超えると年1%に認められる。進行のリスク因子として①骨髄中形質細胞比率10%以上,②血清M 蛋白濃度3 g/dL 以上,③血清遊離軽鎖比の大きな異常(κ/λ比で0.125 以下もしくは8.0 以上)の3 因子を用いた予測モデルが提唱されている()。しかし,従来のくすぶり型多発性骨髄腫の中で,診断後2 年以内に80%以上の確率で多発性骨髄腫へ移行する可能性を予測する因子としてmyeloma-defining biomarker(SLiM:骨髄中形質細胞≧60%,involved/uninvolved 血清遊離軽鎖比≧100,またはMRI で2 カ所以上の5 mm を超える巣状病変あり)の3 因子が抽出された。これらのバイオマーカーを1 つでも有する場合には,2014 年の新IMWG 規準では多発性骨髄腫(症候性)の範疇に含められた。ただし,バイオマーカーを有する患者のすべてが2 年以内にCRAB 徴候を発症するわけではなく,バリデーションも未実施であるため,日常診療において直ちに治療開始すべきか否かは議論のあるところである。日常診療においては,個々の患者の病態を見極めた上で,直ちに治療を開始するか,あるいは注意深い経過観察を行いCRAB 徴候が出始める兆候があった時点で治療を開始するのかを判断することが望ましい(くすぶり型多発性骨髄腫:)。
表 2 レナリドミド,およびデキサメタゾン併用かつ血栓塞栓症を有しない患者にお.
現時点では,多発性骨髄腫は治癒を期待できる疾患ではない。しかし,治療介入により長期の生存が可能となっている疾患である。すなわち,良好な生活の質(quality of life:QOL)を維持しながら長期生存を目指すことが治療目標となる。一般に自家造血幹細胞移植併用大量化学療法(high-dose chemotherapy with autologous hematopoietic stem cell transplantation:HDC/AHSCT)の適応となる65 歳未満の移植適応患者と,65 歳以上あるいは重要臓器の障害のために自家造血幹細胞移植の適応とならない移植非適応患者によって異なった治療戦略が選択される。65 歳という年齢はあくまで目安であり,日常臨床においては生物学的年齢を考慮した上で治療方針を決定する。移植適応患者では,化学療法および新規薬剤を用いた導入療法後の大量メルファラン(MEL)療法による完全奏効(complete response:CR)の達成が長期の無増悪生存期間,ひいては長期生存の代替えマーカーとなることが示されている, 。また移植非適応患者においても,新規薬剤を併用した化学療法によりCR 達成割合の増加が示されており,これまでゴールドスタンダードであったMP 療法を凌ぐ生存期間の延長が期待できるようになった。
支持療法としては,デノスマブやビスホスホネート製剤の併用によって骨痛や病的骨折などの骨関連事象発生の減少効果のみならず,生存期間の延長効果も期待できるようになった, (支持療法:,エビデンスレベル1iiA)。また,腎障害のためにビスホスホネート製剤を使用しづらい場合にもヒト型抗RANKL(receptor activator of nuclear factor-κB ligand)モノクローナル抗体であるデノスマブは使用可能である(支持療法:,エビデンスレベル1iDiii)。デノスマブは投与後に重篤な低カルシウム血症をきたすことがあるため,ビタミンD とカルシウムの補充を予防的に行う。また,これらの薬剤は顎骨壊死(antiresorptive agent-related osteonecrosis of the jaw:ARONJ)などの特徴的な有害事象を有しており,治療介入により患者QOL を損なうことのないように適切な配慮が必要である(支持療法:)。また,骨髄腫細胞は放射線感受性が比較的良好であるため,限局性の溶骨病変や病的骨折部の除痛を目的とした場合や,脊髄あるいは神経根の圧迫が懸念される椎体病変に対しては局所放射線照射が有効である。さらに,骨髄腫に高頻度にみられる合併症である腎障害,原疾患および治療薬の副作用として現れやすい感染症(支持療法:),末梢神経障害や血栓症(支持療法:)に対する予防や支持療法など,きめ細かい配慮が必要となる。
レナリドミド及びデキサメタゾン併用療法における有効性と安全性試験
65 歳未満で重要臓器機能の保持されている初発骨髄腫患者に対しては,効果が迅速で深い奏効を期待でき,かつ自家造血幹細胞採取効率に悪影響を与えない導入療法を施行(移植適応患者:,エビデンスレベル1iiDiv)後,自家造血幹細胞移植を併用した大量MEL 療法を実施することが推奨される(移植適応患者:,エビデンスレベル1iiA)。移植適応患者に対する導入療法としてMEL などのアルキル化剤やレナリドミド(LEN)の長期投与を施行すると,造血幹細胞採取効率の低下につながることが知られており注意が必要である。推奨導入療法としては,高い奏効割合が期待できるボルテゾミブ(BOR)とデキサメタゾン(DEX)併用の導入療法(BD 療法)があり,3〜4 コース施行後に自家末梢血幹細胞採取と保存を行う。より高い効果を期待できる導入療法として,新規薬剤を含む3 剤併用療法であるBCD 療法[BD+シクロホスファミド(CPA)],BAD 療法[BD+ドキソルビシン(DXR)]やBLD 療法[BD+レナリドミド(LEN)]があるが,同時に毒性も増強することに留意すべきである。腎障害を伴っていてもBOR は使用しやすい薬剤である。しかし,肺の間質影や末梢神経障害が存在する場合などのBOR による毒性が懸念される場合には,Ld(LEN+少量DEX)療法,VAD 療法(VCR, DXR, DEX)や大量DEX 療法(high-dose dexamethason:HDD)なども選択肢となる。自家末梢血造血幹細胞は,G-CSF 単独またはCPA 大量療法にG-CSF を併用して採取し,CD34 陽性細胞で2×106 個/患者体重(kg)以上の造血幹細胞を得ることを目標とし凍結保存しておく。わが国においても,CX chemokine receptor 4(CXCR4)とstromal derived factor-1 alpha(SDF-1α)の相互作用を阻害するplerixafor(Mozobil)が承認され,G-CSF との併用でより効率的に造血幹細胞採取が実施できるようになった。また再発時の救援療法としての2 回目の自家造血幹細胞移植に備えて,2 回分の造血幹細胞を凍結保存しておくことも選択肢となるが,使用期限を含めた凍結幹細胞の質的保証体制など施設の現状に合わせた運用が必要である。大量MEL 療法は通常200 mg/m2 を2 日間に分けて投与するが,腎障害がある場合には70%に減量する。2 日目の大量MEL 投与の翌々日に凍結しておいた自家末梢血造血幹細胞を輸注する。早期からの新規薬剤の使用により大量MEL 療法を行うことなく同等の無増悪生存期間が得られるかどうかの臨床試験が複数行われているが,これまでに報告された試験結果からは大量MEL 療法を組み込むことが65 歳未満の患者に対する標準治療である(移植適応患者:,エビデンスレベル1iiDiii)。1 回目の移植後の効果が最良部分奏効(VGPR)未満の患者においては,2 回目の移植(タンデム移植)を実施することで無増悪生存期間(PFS)や全生存期間(OS)の延長効果が得られることが示されている(移植適応患者:,エビデンスレベル2A)。また新規薬剤時代の一部の臨床試験で,染色体高リスク患者に対するタンデム移植のPFS 延長効果が示されている(移植適応患者:,エビデンスレベル2Diii)。しかし最近の欧米の臨床試験では,1 回目の移植後の地固め療法や維持療法として新規薬剤が使用されておりPFS の延長効果,そして一部の臨床試験においてはOS の延長効果も示されている(移植適応患者:,エビデンスレベル1iiDiii)。しかし,いずれの薬剤を用いた場合も至適投与法(投与量,投与レジメンや投与期間など)は確立されておらず,一貫したOS 延長効果が示されるには至っていない。したがって,地固め療法や維持療法は臨床試験での実施が望ましい。日常臨床においての地固め療法や維持療法は,薬剤耐性化や二次がんの発症を含めた有害事象のリスクと患者利益,そして医療経済的な側面をよく考えて,患者ごとに実施するかどうかを決定する必要がある。さらに治癒を目指して,自家造血幹細胞移植後に骨髄非破壊的同種造血幹細胞移植(ミニ移植)を実施する戦略も試みられているが,現段階では研究的治療の域を出ず,臨床試験としての実施が推奨される(移植適応患者:)。
自家移植を目指す場合には、寛解導入療法として、BD療法(ベルケイド+*デキサメタゾン)などの併用療法が行われることが多いという。 ..
移植非適応患者に対する標準治療は現在,D-MPB 療法(DARA, MEL, PSL, BOR)またはD-Ld 療法(DARA, LEN, 少量DEX)である。MPB 療法は,40 年以上にわたって標準治療であったMP 療法(MEL, PSL)に比してPFS の延長効果のみでなくOS の延長効果も示されている。Ld 療法は,MP 療法よりもOS を延長する効果を示したMPT 療法(MEL, PSL,THAL)とのランダム化比較試験において,PFS およびOS の延長効果を示した。D-MPB 療法はMPB 療法に比して,そしてD-Ld 療法はLd 療法に比して,PFS の延長効果を示した(移植非適応の未治療骨髄腫:,エビデンスレベル1iiA)。患者年齢や末梢神経障害,血栓症などのリスクや肺の間質影の合併の有無などを考慮して,従来のMP 療法やMPB 療法,Ld 療法,そしてわが国では保険適用外であるがMPT 療法などの化学療法の選択肢もある。MPB 療法やMPT 療法では,通常9 コースまで継続することを目標とするが,治療継続期間を比較検討した臨床試験は存在しない。Ld 療法の継続投与は,18 コースで終了した場合に比較してPFS の延長が示されている。ただし,全生存期間の延長効果は明らかではなく,18 コースを超えての継続投与に関しては染色体リスク,臨床効果,毒性や医療費負担などを考慮して個別に決定すべきである。また,米国ではBLd 療法(BOR, LEN, DEX)が移植非適応患者における標準治療と位置づけられている。しかし,その根拠となるSWOG S0777 試験における登録患者の57%が65 歳未満の患者であること,そしてBLd 療法を受けた患者のおよそ1/3 でGrade 3 の末梢神経障害を認めたことから,わが国における移植非適応患者の標準治療と位置づけることは困難である。
• デキサメタゾンは血糖上昇や不眠、骨量低下等の副作用を有する
・無増悪生存期間(PFS)の中央値は、レナリドミド+デキサメタゾン併用療法群で31カ月であったのに対して、レナリドミド+デキサメタゾン併用療法へのボルテゾミブ追加投与群では43カ月であった。
・全生存期間(OS)の中央値は、レナリドミド+デキサメタゾン併用療法で63カ月であったのに対して、レナリドミド+デキサメタゾン併用療法へのボルテゾミブ追加投与群ではデータ集積時点ではまだ中央値に達していなかった。
・ボルテゾミブ追加投与群では神経障害が多かったことを除いて、副作用は両群とも類似していた。
レナリドミドとデキサメタゾン併用療法へのボルテゾミブ追加投与は
現在,ボルテゾミブを週1 回の皮下注射で投与したさまざまなmodified BLd 療法の開発が進んでおり,その結果を待って高齢者にも推奨できるか否か判断すべきであろう。MP 療法で代表される従来の化学療法の場合は,プラトー[安定(SD)/不変(NC)以上の効果判定がなされた時点を規準にしてM 蛋白量等の計測値の変化が±25%以内で3 カ月以上継続した場合]に至るまで継続して治療を終了することが一般的であり,それ以上の治療継続は患者利益に結びつかないことが示されている(移植非適応の未治療骨髄腫:,エビデンスレベル1iiA)。また,LEN やTHAL などの免疫調節薬は,DEX との併用により相乗効果が期待できるが,高齢患者に対する大量DEX の投与は感染症,血栓症や白内障を誘発することが示されており,年齢に応じた減量が勧められる(移植非適応の未治療骨髄腫:,エビデンスレベル1iiA)。移植非適応患者に対する導入療法後の維持療法については,PFS 延長効果を示す試験結果があるものの,OS の延長効果を示した大規模試験は限られており,実施する場合は臨床試験の範疇で行うことが勧められる。
• VRD(BRD)療法 : ベルケイド® /レブラミド® /デキサメタゾン
※外国第Ⅲ相臨床試験(MM-020試験)デキサメタゾン併用投与での成績
して多発性骨髄腫を治療するおくすりです。この冊子は、ニンラーロ経口3剤併
再発・難治例に対しては,初回治療の最終投与日から9〜12 カ月以上経過してからの再発・再燃であれば初回導入療法に対する感受性を有している場合も多く,初回導入療法で用いたキードラッグ(プロテアソーム阻害薬や免疫調節薬)を含む2〜3 剤併用の救援療法を試みてもよいし,初回に使用していないキードラッグを含む治療レジメンに変更してもよい(再発・難治性骨髄腫:,エビデンスレベル1Diii または1A)。初回治療終了後9〜12 カ月未満の再発・再燃や治療中の進行や増悪の場合には,初回治療で使用していないキードラッグを含む救援療法の選択が推奨される()。薬剤選択においては,既治療レジメン内容や患者の有する合併症や臓器機能障害の有無などを考慮する必要がある。一般にプロテアソーム阻害薬または免疫調節薬とDEX の2剤併用療法は,外来で実施しやすく患者の負担が少ない。また,3 剤併用療法の方が一般的に臨床的効果は高いが毒性も増強することがあり,個々の患者の状態を把握した上で治療レジメンを決定する(再発・難治性骨髄腫:,エビデンスレベル1iiDiii または1iiA)。移植適応のある60 歳未満の患者においては,救援療法が奏効した場合には2 回目の自家造血幹細胞移植併用の大量MEL 療法を行うという選択もあり,特に染色体標準リスクで初回移植後に長期の奏効期間を示した患者で有効性が高い(再発・難治性骨髄腫:,エビデンスレベル1iiDiii)。同様に救援療法が奏効してHLA 適合ドナーがいる場合には,同種造血幹細胞移植という選択肢もあるが,移植後早期の死亡率が高く再発・再燃も高頻度であることから,臨床試験の範疇で行われることが望ましい(再発・難治性骨髄腫:)。
[PDF] レブラミドRカプセル2.5mg レブラミドRカプセル5mg
前治療歴が1~3回の再発又は難治性の多発性骨髄腫患者792例(各群396例)に対して、レナリドミド及びデキサメタゾンの併用(Ldレジメン)とLdレジメンに本剤を上乗せしたCLdレジメンを比較しました。
主要評価項目である無増悪生存期間の結果(中央値[95%信頼区間])は、CLd群で26.3[23.3~30.5]ヵ月、Ld群で17.6[15.0~20.6]
ヵ月であり、Ld群に対してCLd群で統計学的に有意な延長を示しました。(ハザード比0.69[95%信頼区間:0.57~0.83]、p