A群β溶連菌感染症に対するアモキシシリン7日間投与と10 ..



溶連菌感染、扁桃炎
原因となる微生物として、ウイルス、細菌、真菌などがあるが、細菌感染の中では溶連菌が15~20%と一番多いことがわかっている。溶連菌の中でA群β溶連菌、G群溶連菌が合併症を起こし問題となる。Streptococcus Pyogenesとも呼ばれる。α溶連菌は常在菌で、通常は問題とならない。
感染成立機序はヒトからヒトへの飛沫感染。溶連菌感染を持っている患者から唾などの分泌物を飛沫として浴びることによって、溶連菌がのどに付着、増殖して感染が成立する。溶連菌感染症は3歳以上で多く、特に5歳に最もピークがある。
濃厚接触が必要な飛沫感染なので、集団生活の場、例えば保育園、幼稚園、学校といったところで感染しやすいと言われている。また、家庭内での感染もある。
この感染は、感染後の続発症としての、糸球体腎炎あるいはリウマチ熱という病状が重要となる。糸球体腎炎は、症状として高血圧、浮腫、乏尿、血尿、蛋白尿が出てくる疾患で、原因として90%以上が溶連菌の後に起きることがわかっている。溶連菌感染後、典型的な急性糸球体腎炎は2%ぐらい、顕微鏡でやっと血尿がわかるぐらいの、あまり症状がないような軽い腎炎は20%起きると言われている。
リウマチ熱は溶連菌の感染が原因で、心炎、多関節炎などを起こす疾患。溶連菌感染症で抗生物質治療を行わないと、3%ぐらいに発症すると言われている。適切に抗生剤で治療すると、100分の1以下、0.02%くらいにしか発症しない。現在日本では殆ど見られない疾患となっているが、アメリカでは小流行があったり、開発途上国ではまだよくある疾患で、溶連菌感染症では抗生剤を適切に使ってリウマチ熱を予防することが大事になる。
溶連菌の感染にはペニシリン系の抗生物質が一番よく使われる。具体的にはペニシリンGとか、アモキシシリンとか、昔からあるペニシリンを使うことが一般的。通常は経口投与で十分で、投与期間としては最低10日間といわれている。患者によってはペニシリンアレルギーがあるので、その場合にはマクロライド系抗生物質、エリスロマイシンを使うこともある。ただ、エリスロマイシンに耐性の溶連菌が数%あるといわれているので、エリスロマイシンを使う場合には培養で感受性を確認する必要がある。最近の新しいマクロライド系の抗生物質は耐性が少なく細胞内移行も良いので使いやすい。セファロスポリン系の抗生物質に関しても、第1世代、第2世代を使って同等の効果があったと報告されている。ただ、基本的には正常な細菌叢をあまり乱したくないということで、狭い細菌に効く古典的なペニシリンがファーストチョイスになる。
スタンダードな治療であるペニシリン投与によって、5~30%ぐらいで除菌に失敗することが報告されている。その理由は、薬を10日間飲んでいない場合や、検査室で感受性を調べると耐性菌ではないが、溶連菌が細胞内に侵入する場合があり、ペニシリンだと細胞内に移行しにくくて、除菌が出来ないのではないかと推定されている。また、βラクターゼ分解酵素を持つ細菌が溶連菌以外に共存して、ペニシリンを効きにくくしていることも考えられている。家庭内での再感染もある。そこで、除菌が失敗してしまった場合には、再度、薬をきちんと飲んでもらい、初回と同じ治療をすることもある。また、βラクターゼ阻害剤との合剤のペニシリン、第2世代のセフェム系、新しいマクロライド系の抗生物質を使う場合もある。
溶連菌の感染の後で注意するべきことは続発症であり、急性糸球体腎炎が起きないかどうか、検尿で血尿が出ていないか、蛋白尿が出ていないかどうかを調べることが重要。溶連菌感染後、2週目と4週目ぐらいに検尿するようにしている。再発することもあるので、熱が出たら再来するように患者に説明する事も大事。熱も下がっているのに、なんで抗生物質を10日間も飲まなくてはいけないのかと疑問を持たれるお母さんもいると思われるが、続発症を起こさないようにするため、また再発しないようにするためだと十分説明して、抗生物質をしっかり飲んで頂くことが大事。
咽頭所見がない発熱時に迅速診断キットを用いることの適否に関して。一般に溶連菌による咽頭扁桃炎では、典型的な咽頭所見があるが、それほどのどが赤くないけれども、検査してみると陽性になるということがあるので、早期に的確に診断するという意味では、迅速診断キットを典型的な咽頭所見が無くても使うことはよいのではないか。アメリカでは、溶連菌感染を疑う指標としてCentorスコアが使われている。Centorスコアでは、咽頭発赤以外に、頸部リンパ節が腫れている、咳がない、38度以上の発熱、年齢が3才以上、14才以下、こうした項目を2つ以上満たす場合には、迅速診断キットを使って早期診断した方がよいとされている。
予防法として、飛沫感染による濃厚な接触で感染するので、よくうがいをする、手洗いをするということが基本になる。感染が明らかになった場合には、抗生物質を飲んでも24時間以内には他の人に移しやすいとされているので、その間は学校に登校させないということも必要。

参考資料




当院では溶連菌感染症の治療にアモキシシリンを第一選択としています。2010~2017 年に治

扁桃の基礎知識
扁桃は中咽頭の両側において、口蓋舌弓(前口蓋弓)および咽頭口蓋弓(後口蓋弓)に囲まれている扁桃洞内に存在するリンパ組織である。
扁桃には無数の扁桃陰窩とよばれる深い凹みが存在し、この中には脱落した上皮細胞、白血球、リンパ球、細菌などが混在した、黄色い粥状あるいは塊状の扁桃膿栓が貯留している。陰窩は扁桃表面全体に分散しているので、微細な膿栓は扁桃全体に存在するが、上扁桃窩と呼ばれる扁桃の上半部のほうが下部よりも陰窩は複雑に深くなっているため、大きな膿栓は上陰窩に多い。
扁桃には免疫機能としての働きと、感染により炎症を起こす、という相反する性質がある。
免疫臓器としての扁桃:外来性の抗原は扁桃の陰窩より侵入し、表面の上皮とリンパ球が混在しているリンパ上皮共生部位とよばれる部分で抗原処理され、抗原情報が扁桃実質内へ伝えられていくと考えられる。抗原情報はヘルパーT細胞を介してリンパ濾胞の胚中心に伝えられ、そこでB細胞が成熟分化し抗体産生細胞となり、抗原特異的な免疫グロブリンが産生され、液性免疫が遂行される。
感染臓器としての扁桃:扁桃は、その解剖学的位置から常に外界と接しており、生後間もなくから感染にさらされる。健常なヒトの扁桃においては、常に炎症があることが通常の状態であり、炎症の全く無い扁桃は無いともいえる。扁桃には常在細菌叢があり、健康人や慢性扁桃炎患者の扁桃からの培養によりα-streptococcusやNeisseriaが高率に認められる。急性扁桃炎ではA群β溶連菌、黄色ブドウ球菌およびインフルエンザ菌が重要な起炎菌となる。また、扁桃はウイルスの侵入門戸として最適であり、ライノウイルス、コロナウイルスおよびパラインフルウイルスなどの風邪ウイルスのほかに、アデノウイルス、EBウイルス(伝染性単核球症)、単純ヘルペスウイルス、コクサッキーウイルスA(小児のヘルパンギーナ)、サイトメガロウイルスなどが代表的なウイルス感染症としてあげられる。細菌以外の扁桃炎の誘因としては塵芥、刺激性ガス、寒冷、暴飲暴食、疲労などの影響が考えられる。
正常扁桃と病的扁桃の差異は移行型が多いことから、局所炎症や全身症状の明らかな場合を除けば、その臨床所見や病理組織像にしても鑑別は困難と言える。急性カタル性扁桃炎は、扁桃の表面粘膜の炎症を主とした比較的初期の病変であり、表面粘膜と粘膜の上皮下や陰窩に血管の拡張、充血とともに滲出性分泌物と白血球遊出がみられる。臨床的には扁桃の発赤膨隆が主な所見である。炎症が扁桃表面のみならず陰窩にも及んだ急性陰窩性扁桃炎では扁桃は発赤膨隆し、陰窩上皮が剥離脱落し、白血球を主とした滲出物とともに陰窩内を満たし、陰窩に一致した黄白色の膿栓を形成する。日常臨床で咽頭痛、発熱および全身倦怠感とともに最も多く遭遇する扁桃炎である。さらに炎症が陰窩性から進展して陰窩の近傍だけではなく実質全体に及んだ実質性炎症状態になると、陰窩上皮は潰瘍を形成し、滲出物は線維素状となり陰窩を満たす。これが押し出されると、白血球、リンパ球、細菌塊および線維素などから成る黄白色膿栓を形成することになる。病態がさらに進行すると、膿栓は互いに融合し扁桃表面を覆い、偽膜を形成する。
慢性扁桃炎は急性扁桃炎の反復罹患による後遺症の場合が多い。急性炎症の発作がなくても、外来刺激、後鼻漏、口呼吸、喫煙、有毒ガスや塵芥を含めた吸入性抗原および花粉などによって一時的に起こることもある。局所的症状はほとんどなく、軽い咽頭痛、異物感、乾燥感や掻痒感があり、陰窩に膿栓があれば口臭を伴う。急性炎症を繰り返すと、陰窩の深部や実質内に化膿巣を作り、周囲組織と癒着するようになり、扁桃の表面は凹凸不整で、陰窩は拡大し、前口蓋弓に充血が見られる。慢性扁桃炎で習慣的に急性炎症を繰り返していると、扁桃はむしろ小さくなることがある。治療は陰窩の洗浄が最適とされる。膿栓の除去にはレーダー吸引管が用いられる。日常生活では含嗽を励行し、口腔内の清浄化に心掛ける。炎症が強くなった場合には、抗炎症剤、抗プラスミン剤、ビタミンCなどの内服が良いとされる。習慣性扁桃炎に対しては手術的治療も検討することになる。
参考:「二つの顔を持つ臓器 扁桃とその病気」形浦昭克著 南山堂

成人の咽頭炎の多くはウイルス性であり、抗菌薬は不要である。特に咳、鼻汁、嗄声など咽頭以外の症状を伴う場合には、ウイルス性の可能性が高い。成人では細菌性咽頭炎は20%程度で、その多くがA群溶血性連鎖球菌(GAS)によるため、ペニシリンGまたはアモキシシリンで治療する。治療の目的は、症状の緩和(1-2日間罹病期間が短縮)、扁桃周囲膿瘍のような化膿性合併症の予防(NNT27)、周囲への飛沫感染予防(投与後24時間で感染性が減少)、リウマチ熱の予防(NNT3000〜4000)である1)

・連鎖球菌属(α-及び β-溶連菌株のみ)、肺炎球菌、ブドウ球菌属及びインフル

clsaacによるModified Centor criteria2)
年齢、症状、身体所見から、検査・抗菌薬治療の必要性を判断することができる。2点以上の場合には、A群溶連菌迅速抗原検査(Strep)を行う。感度70〜90%、特異度95%。陽性の場合は抗菌薬治療を行う。陰性の場合は、小児・青年期では、さらに咽頭培養(より感度が高い)を行うことがあるが、成人では不要3)。ただし、迅速検査と咽頭培養を同時に行うと保険で切られてしまうため注意を要する。

抗菌薬治療の必要性
迅速検査や咽頭培養が陽性であれば治療する。迅速検査が陰性でもCentor criteriaで合計3点以上の場合は、偽陰性の可能性(およびC群・G群溶連菌やFusobacterium属が原因菌である可能性)を念頭に治療を検討してもよい4)

溶連菌感染症の薬物療法は?(薬局)公益社団法人 福岡県薬剤師会

治療4, 5)
ペニシリンG(バイシリンG®)が第一選択であったが、現在国内で流通していない。そのため、現在は、アモキシシリンを第1選択とする。ただし、EBウイルスによる伝染性単核球症(GAS咽頭炎と症状・所見が似ている)の場合、高率に皮疹を起こすので、注意して使用する。ペニシリンアレルギーがある場合にはクリンダマイシンを使用するが、即時型反応でなければセファレキシンを検討してもよい。日本ではマクロライド耐性溶連菌が増加しているのでクラリスロマイシンやアジスロマイシンは使わない。咽頭炎にレボフロキサシンや広域セファロスポリンを用いる意義はない。難治性、再発性の場合、扁桃周囲膿瘍などの重症例を疑う場合は、感染症コンサルトを考慮する。

A群溶血性連鎖球菌(溶連菌)は、子どもののど(急性咽頭炎)や皮膚(膿痂疹)に感染症を起こす細菌です。ありふれた感染症ですが、感染後にリウマチ熱や急性糸球体腎炎を起こすことがあり、注意が必要です。

小児への溶連菌に対して処方された「アモキシシリン」ですが、服用方法など疑義照会は必要でしょうか?

溶連菌による急性咽頭炎を抗菌薬で治療すれば、リウマチ熱は防げます。急性糸球体腎炎は咽頭炎でも膿痂疹でも起こす可能性があり、抗菌薬で治療しても防げません。溶連菌感染後は1ヶ月くらい、むくみや血尿、高血圧などの症状に注意が必要です。

溶連菌による急性咽頭炎は、溶連菌がのどに感染して、発熱、のどの痛み、頬や首が赤くなる発疹が出ます。発疹が強い場合は猩紅熱とも呼ばれます。5~15歳の子どもに、冬から春先にかけて多くみられます。唾液や鼻水を介して伝染し、潜伏期間は2~5日です。流行状況や、のどの所見(のどが赤く腫れていたり、膿がついているなど)から、溶連菌感染の可能性がある場合、抗原迅速検査を行って診断します。


溶連菌感染症後の続発症(リウマチ熱や糸球体腎炎など)の診断には抗体が最も有用 ..

溶連菌が皮膚に感染すると、伝染性膿痂疹(とびひ)になります。最初は周囲の赤みを伴う水ぶくれで、水ぶくれがにごった膿となり、厚いかさぶたでおおわれます。溶連菌は、虫刺されや引っかき傷から入り込みます。感染した場所をかきむしると、どんどん感染が広がっていくことから、「とびひ」とも呼ばれます。汗をかいて肌が荒れやすい夏に流行します。

➢ 溶連菌はとくに抗生剤の有効性が高い菌です。抗生剤を内服すると、多くの場合

とびひは、黄色ブドウ球菌でも起こります。黄色ブドウ球菌は、溶連菌と違って、抗菌薬が効きにくい耐性菌が多いです。治りが悪い場合は、黄色ブドウ球菌も考えて、抗菌薬を変更します。

溶連菌感染症の症状は? 主な症状としては、扁桃炎(へんとうえん)、伝染性膿痂 ..

ことがあります。特に5~12歳くらいに多くみられます。咽頭炎の1~2週間後、膿痂疹なら3~6週間後に、突然、血尿や高血圧、むくみが出て発症します。尿検査をしてはじめて血尿が判明する程度の軽症のこともあれば、目で見て分かるほど尿が赤くなったり、高血圧のせいで頭痛やけいれんを起こすこともあります。ただ、ほとんどの場合、入院して安静にしてもらい、塩分や水分を制限するなどの治療をきちんとすれば、なおります。以前は、溶連菌感染症の2~4週間後に尿検査をすることもありましたが、とされています。

はじめに 発熱の原因になる、子どもの日常感染症の一つである溶連菌感染症ですが、どのような原因で感染するかご存じ.

A:溶連菌感染は複数回かかることがあります。ヒトに感染して病気を起こすA群溶血性連鎖球菌は、菌の表面にあるM蛋白の種類によって220以上もの血清型に分類されます。溶連菌に1回かかっても、M蛋白が異なる溶連菌には免疫ができません。子どものうちに複数回の溶連菌感染を起こすことはありえます。ただ大人になると、流行しやすいタイプの溶連菌にはたいてい免疫ができてしまうので、溶連菌感染症にかかりにくくなります。
なお、M蛋白の種類に応じて、リウマチ熱を起こしやすいかどうか、急性糸球体腎炎を起こしやすいかどうかが決まります。地域で子どもの急性糸球体腎炎が流行している場合は、溶連菌感染後には特に注意が必要です。

溶連菌時のアモキシシリンカプセルの量について2019/12/23

A:異なる種類の溶連菌に繰り返し感染している場合と、溶連菌の保菌者がウイルス感染を繰り返している場合の2通りが考えられます。無症状にもかかわらず溶連菌がのどに住み着いていることがあり、このような人を保菌者といいます。保菌者が、ウイルス性の咽頭炎を起こしたとき、検査では溶連菌が検出されるので、一見、溶連菌による咽頭炎にみえてしまいます。区別するためには、(1) 溶連菌による咽頭炎であれば、抗菌薬の内服から24時間以内に症状が改善すること、(2) 無症状時にものどから溶連菌が検出されること、(3) 周囲の流行状況、から総合的に判断します。
なお、無症状の保菌者は、他の人へ感染させる危険は低く、また本人に合併症を起こすこともありません。無症状の保菌者への治療は不要です。

お世話になります。一昨日より熱と激しい喉の痛みがあり、昨日耳鼻咽喉科で溶連菌と診断され、アモキシシ…

おもにA群溶血性連鎖球菌という細菌による感染症です。その他にもB群溶連菌によるものがありますが、ここではA群のみをお話しします。

溶連菌性咽頭炎に対してアモキシシリン1日1回投与は有効。 ..

A群溶血性レンサ球菌は、上気道炎や化膿性皮膚感染症などの原因菌としてよくみられるグラム陽性菌で、菌の侵入部位や組織によって多彩な臨床症状 を引き起こす。

風邪のはじめのこともあるが、溶連菌を考える必要がある。 ほぼ、同時に ..

A:リウマチ熱とは、溶連菌による急性咽頭炎の2~3週間後に、関節痛や心炎、舞踏病を起こす病気です。溶連菌の感染を繰り返して心炎がくすぶり続けると、10年以上たってからリウマチ性弁膜症になります。これを防ぐため、リウマチ熱にかかったら、10年以上の長期にわたって抗菌薬を飲み続けなくてはなりません。舞踏病とは、不随意運動といって手足が勝手にピクついたりして不器用になります。落ち着きがなくなったり、学校の成績が急に下がったりすることで気づかれることもあります。不思議な症状ですが、鎮静薬(フェノバルビタールなど)で症状を抑え、時間がたてば自然によくなります。
溶連菌による急性咽頭炎にかかっても、発症から9日以内に抗菌薬で治療すれば、リウマチ熱は防げます。急性咽頭炎がよくなっても抗菌薬を一定期間飲み続けてもらうのは、リウマチ熱を予防するのが目的なのです。

溶連菌感染症の治療に使用できる抗菌薬のリストは以下の通りです:

A:昔は子どもの心臓病で最も多かったのがリウマチ熱、リウマチ性弁膜症でした。
アメリカのデータでは、20世紀初頭は10万人あたり年間200人の発生頻度だったのが、1940年代には10万人あたり50人に、現在では10万人あたり0.5人まで減っています。日本小児循環器学会の集計では2014年にリウマチ熱を発症した子どもは、全国で7人でした。リウマチ熱、リウマチ性弁膜症が激減した理由として、二つの要因が考えられています。
まず第一に、そもそもリウマチ熱を起こしやすい血清型の溶連菌が減ったことがあります。溶連菌による急性咽頭炎は今でも子どもによくみられますが、溶連菌の中にもリウマチ熱を起こしやすい型とそうでないものがあります。不衛生な環境で子どもたちが密集して生活していると溶連菌感染が広がっていきます。生活環境がよくなって感染の連鎖が絶たれたことにより、リウマチ熱を起こしやすい血清型の溶連菌が先進国からほぼ消えてしまったと考えられます。溶連菌による急性咽頭炎自体は自然に治ります。もはやリウマチ熱を心配する必要がないのであれば、日本においては、溶連菌感染症を一人残らず見つけて全例に抗菌薬を投与する、という意義はあまりないと言えるでしょう。
第二の要因として、急性咽頭炎に対して抗菌薬による治療が行われるようになったということも関係しているでしょう。いずれにせよ、日本を含む先進国では、リウマチ熱、リウマチ性弁膜症は非常にまれな病気になりました。溶連菌による急性咽頭炎にかかっても、抗菌薬による治療がなされれば、まず心配はいりません。血液検査で血清抗体(ASO, ASKなど)が上昇していることだけを根拠に、リウマチ熱と診断するのは適切ではありません。

アモキシシリン… こないだ溶連菌咽頭炎になった時に処方されて


(参考文献)
健康児童の咽頭溶血レンサ球菌保菌状況
Author:田中 大祐(富山県衛生研究所), 磯部 順子, 細呂木 志保, 清水 美和子, 永井 美之, 田中 桂子, 田中 有易知
Source: 富山県衛生研究所年報 (0917-0707)25号 Page115-117(2002.10)

溶連菌にかかってしまい、アモキシシリンを処方してもらいました。 服用

A群溶血性連鎖球菌の一般的な感染症は、急性咽頭扁桃炎です。治療が行われないと中耳炎、副鼻腔炎、扁桃周囲膿瘍・咽後膿瘍(とても重症になることがあります)、化膿性リンパ節炎などがあります。しばしば、腹痛、嘔気、嘔吐などの消化器症状を伴うことがあります。

[PDF] 溶連菌の感染症が増加中!抗菌薬は適切な使用方法を守って

症例)20代男性 既往歴、併用薬なし
開始日:4日前から咽頭違和感と発熱あり。両側扁桃に白苔(はくたい)、黒色化したびらんを認めた。
インフルエンザ、COVID-19、溶連菌検査の結果、すべて陰性。
オーグメンチン配合錠250RS(クラブラン酸・AMPC250mg)、サワシリン錠(AMPC)250mg各1錠1日3回毎食後で服用開始。
開始4日後:2回目の受診。
前日38℃、咽頭痛。両側口蓋(こうがい)扁桃腫大あり、白苔なし。腹部に発疹あり、伝染性単核球症を疑い、オーグメンチン、サワシリン中止。EBV-VCA-IgM 2.5【陽性】、AST:69、ALT:217、γGTP:301、ALP:180
開始5日後:解熱、咽頭痛消失。
10日後:3回目の受診で、発疹、肝機能改善傾向。AST:28、ALT:53、γGTP:152、 ALP:99
その後、受診なし。