薬剤師のためのBasic Evidence(制吐療法) | 日医工株式会社
ランダム化比較試験やプールドアナリシスの結果では,デキサメタゾン4~8 mg 経口投与(2~3 日目)とNK1受容体拮抗薬であるアプレピタント80 mg 経口投与(2~3 日目)の併用がデキサメタゾン単独より有用であった。この2 剤併用は,5-HT3受容体拮抗薬とデキサメタゾンの併用に比べても有意に遅発性嘔吐を抑制しており(21% vs.36%,p<0.001),ASCO ガイドライン2017,MASCC/ESMO ガイドライン2016 で推奨されている。
デキサメタゾン(商品名デカドロン)、中等度の吐き気を起こす抗が
ASCO ガイドライン2017 によれば,遅発性嘔吐は,程度としては軽度なものが多いが,急性嘔吐の対処が不十分なときに起こりやすいとされる。治療としては副腎皮質ステロイド(経口デキサメタゾン)が推奨されており,メトクロプラミドや5-HT3受容体拮抗薬とも併用される。しかし,デキサメタゾンに加え5-HT3受容体拮抗薬を併用しても制吐効果の増強は得られない。さらに,急性嘔吐を認めた場合にはこれら2 剤を併用しても効果は不十分であるとされているため,抗がん薬の催吐性リスクや患者の状態に応じていずれか一方の使用にとどめるべきと思われる。
遅発性嘔吐は,抗がん薬投与後24 時間以降に発現するもの,と定義されており,そのコントロールは,患者のQOL 維持,さらに精神的安定や治療に対する意欲の向上のためにも必要不可欠である。薬剤の催吐性リスクを適正に評価し,エビデンスに基づいた制吐薬の適切な使用を検討する必要がある。
◎吐き気止めは効果のある方を使用してください。 (2種類同時に飲むこともでき ..
参考文献:
1)一般社団法人 日本癌治療学会 編集「制吐薬適正使用ガイドライン 2023年10月改訂【第3版】」
2)特定非営利活動法人 日本緩和医療学会 編集「がん患者の消化器症状の緩和に関するガイドライン2017年版」
3)NCCN Guidelines Version 2.2022 Antiemesis AE-1
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種類の吐き気止め(ニューロキニン1受容体拮抗薬、デキサメタゾン、セロトニン 5-HT3 受容体拮抗薬)で吐.
また,MASCC/ESMO ガイドライン2016 では5-HT3受容体拮抗薬とデキサメタゾン (12 mg に減量→ 参照)とアプレピタントによる3 剤併用療法も,高度リスクの抗がん薬による急性嘔吐と同様に遅発性嘔吐に対しても推奨されている。
制吐療法の考え方、対策できる選択肢などを知ることで、吐き気で苦しむ人が一人でも減ることを願っています。
本来は吐き気止めではないが、悪心・嘔吐に有効。 しかし、国際標準用量の10mgは ..
今回、ガイドラインの内容を軸に、制吐薬の適正使用についてお伝えしてきました。
・突然起こる吐き気(突出性悪心・嘔吐)に対してメトクロプラミドを頓服で使用。
・予期性悪心嘔吐に関しては、抗不安薬(ロラゼパム、アルプラゾラム)を追加する。
・高血糖がある場合、ステロイド薬(デキサメタゾン)の代わりにグラニセトロンなどの制吐薬を代替可能。
[PDF] 2016年04月 『抗癌剤の催吐性リスク分類と制吐療法について』
ここでお伝えしておきたいのが、「この抗がん剤には、この制吐療法と必ずしも決まっているわけではない」、という点です。
抗癌剤治療に伴う副作用のひとつである、吐き気・嘔吐を適切にコントロール ..
さて、次は使用する抗がん剤の「催吐性リスク」がわかれば、次は制吐薬の選択です。
薬物相互作用 (27―がん化学療法における制吐剤の 薬物 ..
トラスツズマブ デルクステカン(エンハーツ®)は、海外では高度催吐性リスクに分類されているガイドライン(NCCN)もあり、今後国内でのエビデンス蓄積に応じて、分類が変更される可能性があります。
る制吐薬が無効のとき,併用薬としてセロトニン 5HT3受容体拮抗薬の投 ..
皆さんの使用している抗がん剤は、どのリスクに該当していましたか?
これらのリスクに応じて制吐療法が決定されます。
(CINV) 予防において、 NCCNが推奨するデキサメタゾン ..
「制吐薬の選択は、予定する抗がん剤の催吐性リスク、過去の制吐療法の効果、患者背景因子を考慮して決める」
つまり、吐き気止めを適切に使用して、しっかり吐き気を抑えることは、抗 ..
ここまで「制吐薬とは何か?」について見てきました。
では実際にどのように使い分けられているのでしょうか?
ん剤の場合にはセロトニン受容体拮抗薬、デキサメタゾン、軽度の場
第1 世代の各5-HT3受容体拮抗薬の制吐効果に差はないとされているが,わが国で行われた高度リスクの抗がん薬投与に対する,第2 世代の5-HT3受容体拮抗薬パロノセトロンとデキサメタゾンの併用群とグラニセトロンとデキサメタゾンの併用群の制吐効果を検討した第III相ランダム化比較試験において,パロノセトロンとデキサメタゾンの併用群が有意に遅発性嘔吐を抑制したことが示されている(参照)。また,高度リスクの抗がん薬投与に対するパロノセトロン,デキサメタゾン,アプレピタント併用群と,グラニセトロン,デキサメタゾン,アプレピタント併用群の制吐効果の比較を行った第III相ランダム化比較試験(TRIPLE 試験)が報告され,主要評価項目ではないがパロノセトロン群が遅発期において有意に悪心・嘔吐を抑制したことが示された。
全身麻酔後には吐き気や嘔吐がおこることがあります。特に女性やタバコを吸わない方、乗り物酔いし
薬剤の催吐性リスク分類は単剤での評価が基本であるが,同一薬剤であっても投与量,投与法によって異なり,さらに近年ではいずれの悪性腫瘍においても多剤併用療法が主流となっているため,催吐性リスクが過小評価とならないよう細心の注意を払うべきである。この点に関して,アントラサイクリンとシクロホスファミドの併用療法について,それぞれ単剤(シクロホスファミド≦1,500 mg/m2)では中等度リスクに分類されるが,NCCN ガイドライン2017 では高度リスク群として明記され,MASCC/ESMO ガイドライン2016 およびASCO ガイドライン2017 においても嘔吐頻度が高いことが示されている〔→参照〕。さらに,抗がん薬を複数日にわたって施行するレジメンの場合,薬剤の投与順序に応じて急性嘔吐と遅発性嘔吐が重複する場合もあり,より綿密な治療計画が望まれる。その一例としてリンパ腫におけるESHAP 療法では,1 日目から4 日目は中等度リスクとして対処し,高用量シタラビンが投与される5 日目以降は高度リスクとして対処する。
• 体動に伴い吐き気が出現する患者さん。 • 同時にめまいも伴う。 • 病態:前庭系の刺激
ふくしま・あき:社会福祉士。立教大学法学部卒。医療系出版社、サンデー毎日専属記者を経てフリーランスに。医療・介護問題を中心に取材・執筆活動を行う。著書に「がん、脳卒中、心臓病 三大病死亡 衝撃の地域格差」(中央公論新社、共著)、「病院がまるごとやさしくわかる本」(秀和システム)、「病気でムダなお金を使わない本」(WAVE出版)など。
じて抗コリン薬やヒスタミン H1受容体拮抗薬の追加,症状が続けばコルチコステロ
これらはすべて吐き気止め薬ですが、がん薬物療法中の多くの方が使用していると思います。
薬であるカルボプラチンは吐き気や嘔吐が起こりやすい薬であり、 ..
では、それぞれの神経伝達物質の作用を抑えるために、どのような制吐薬が使われるのでしょうか?
○この薬をデキサメタゾン抑制試験に使用する前に、褐色細胞腫やパラガングリ ..
なおホスアプレピタントの海外第III相ランダム化比較試験として,中等度リスクの制吐薬治療における5-HT3 受容体拮抗薬とデキサメタゾン併用に対するホスアプレピタントの上乗せ効果が報告されている。
• 発現頻度は抗がん薬の催吐性によって大きく影響され、制吐療法も
アントラサイクリン+シクロホスファミド併用(AC)療法においてアプレピタントを使用しない臨床試験のエビデンスから,2 日目以降のデキサメタゾンの上乗せ効果は証明されていない。さらにステロイドの副作用を減ずる目的で,AC 療法に対する2~3 日目のステロイド使用を行わないsteroid sparing という投与法は,ステロイド通常使用に対する非劣性が海外の第III相ランダム化比較試験で示されている。本邦でも,アプレピタント(またはホスアプレピタント)を併用した第III相試験において,AC療法を含む高度リスク抗がん薬に対するsteroid sparing が可能であることが示された14)。ただし使用された5-HT3受容体拮抗薬はパロノセトロンのみであることに留意する必要はある。したがって,AC 療法においては,steroid sparing は選択肢の一つとなる(→ 参照)。
• デキサメタゾンは血糖上昇や不眠、骨量低下等の副作用を有する
基本的に5-HT3受容体拮抗薬とデキサメタゾン6.6~9.9 mg を静注(8~12 mg を経口)の2 剤併用とするが,一部の抗がん薬(カルボプラチン,イホスファミド,イリノテカン,メトトレキサート等)を投与する場合にはアプレピタント125 mg 経口投与もしくはホスアプレピタント150 mg 静脈内投与の併用が推奨され,その際にはデキサメタゾンを減量(静注: 3.3~4.95 mg,経口: 4~6 mg)する(→参照)。また,わが国では400 例を超えるオキサリプラチン投与患者に対する第III相ランダム化比較試験が行われ,5-HT3受容体拮抗薬とデキサメタゾン併用下において,アプレピタント/ホスアプレピタント群がコントロール群より全治療期間,特に遅発期の悪心・嘔吐の制御に優れることが示された。
医療用医薬品 : デキサート (デキサート注射液1.65mg 他)
NCCN ガイドライン 2015 では,アプレピタントの代わりに多受容体作用抗精神病薬(MARTA)であるオランザピンをパロノセトロンとデキサメタゾンと3 剤併用で用いるオプションが示された。さらに同2017では,新たにアプレピタント(またはホスアプレピタント),パロノセトロン,デキサメタゾンの3剤併用にオランザピンを加えるレジメンも提示された。これらは,シスプラチンとAC療法を含む高度リスク抗がん薬投与に際し,オランザピンが,パロノセトロンとデキサメタゾン併用下においてアプレピタントと同等であることが示された第Ⅲ相ランダム化比較試験や,アプレピタント(またはホスアプレピタント),パロノセトロン,デキサメタゾンの3剤併用にオランザピンを加える有用性が示された第III相ランダム化比較試験の結果を受けている。ASCO ガイドライン2017 でもオランザピンを加えた4剤併用が推奨療法として追加された。オランザピンはわが国でも複数の臨床試験が行われた。オランザピンは公知申請により2017 年6 月から,他の制吐薬との併用において成人では5㎎ を1 日1 回経口投与(患者状態により最大1日10㎎ まで増量可能),最大6 日間を目安として先発品と一部の後発品で保険下にて使用が可能となった。本邦における推奨用量,使用方法については未だ検証段階であるため,適切な患者に慎重に投与することが望まれる。慎重投与すべき患者としては,糖尿病患者ならびに高血糖あるいは肥満等の糖尿病の危険因子を有する患者であり,使用に際しては副作用の傾眠や血糖上昇に十分注意する。高齢者への投与も慎重に行うべきである。作用点が重複するドパミンD2 受容体拮抗薬ドンペリドン,メトクロプラミド,ハロペリドール,リスペリドンなどとの併用は勧められず,また,睡眠薬との併用には注意を要する。投与量に関してはランダム化第Ⅱ 相試験ではあるが,高度リスク抗がん薬投与に対し3剤併用に加えたオランザピン5 ㎎ と10 ㎎では遅発期の悪心・嘔吐の制御において同等であったとの報告もある。