通常、成人にはレムデシビルとの併用においてバリシチニブとして4 mgを1日1回経口投与する。
4/25 追記
米国で進行中だったレムデシビル+デキサメタゾン療法とレムデシビル+バリシチニブ療法の比較試験(ACTT-4)が、有効性において有意差が出ない見込みのために新規の症例登録を中止したとの報道がありました。炎症を抑制する薬剤としては、病態に応じてデキサメタゾンとバリシチニブのどちらかを使えば良いと思われます。
(両方使用するとさらなる有効性が期待できるかは、追加で検討が必要と思われます。)
に、レミデシビル使用時のバリシチニブ併用の有用性も報告されている20)。
背景
新型コロナウイルス感染症(Covid-19)に対するレムデシビルの有効性は前試験(The adaptive covid-19 treatment trial-1:ACTT-1)で示されたが依然として死亡率が高い。サイトカイン・ストームといわれる制御不能な炎症が重症度と関連していると考えられており、この炎症を抑えることで臨床転帰が改善することが期待されている。
バリシチニブは選択的Janus kinase (JAK) 1 and 2阻害薬であり、COVID-19発症時にみられるサイトカインを抑制することや酸素化を改善することがこれまでの研究で示されている。本研究はバリシチニブをレムデシビルと併用することにより臨床転帰を改善するか検証した。
ニュースなどで多くの方がご存じかと思いますが、たとえ新型コロナウイルス感染症を発病しても、ほとんどの患者さんは風邪のような症状をへて軽症のまま治ってしまいます。
しかし、一部の患者さんでは重症化して酸素吸入が必要になったり、更に悪化して人工呼吸器やECMOで生命を維持する治療が必要になったり、最悪の場合亡くなってしまったりします。
このような重症化が起こるメカニズムとしては、ウイルスの感染をきっかけに免疫システムが、いわゆる「サイトカイン・ストーム」を起こし、制御不能な炎症が肺を始めとした臓器に生じてしまうという説が有力です。
このため、新型コロナウイルス感染症の治療としては、①発症早期にはウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬を、②サイトカイン・ストームで重症化した場合には炎症を制御する薬剤を、という二段構えの戦略が必要になります。
新型コロナウイルス感染症に対する治療薬として国内承認された薬剤のうち、昨年5月に承認されたレムデシビル(ベクルリー®)は①の働きを持つ薬であり、昨年7月に承認されたデキサメタゾンは②の働きを持つ薬剤でした。
今回国内承認されたバリシチニブ(オルミエント ®)は②の働きを持つ薬剤ですが、デキサメタゾンと比較してどちらが有効性・安全性で優れているかは今の所わかっていません。
米国の疾病対策予防センター(CDC)のガイドラインでは、②の薬剤としてはデキサメタゾンを優先し、副作用の問題(高血糖など)でステロイドホルモンが使用できない症例では、バリシチニブの投与を検討するように記載されているようです。
一方、日本国内では、昨年末あたりからバリシチニブの保険適応外での使用が認められ、重症のコロナウイルス感染症の患者さんに投与が開始されていましたが、
①肺炎の陰影がCTスキャンで確認され、酸素飽和度が低下し始めるとレムデシビルの投与を開始
②悪化して酸素吸入が必要な状態になると、レムデシビルにデキサメタゾンを追加
③デキサメタゾン投与でもさらに悪化すると、上記2剤にバリシチニブを追加
という形で、デキサメタゾンとバリシチニブのどちらかを選択するというよりは、両剤を併用する医療機関が多いようです。
どちらが治療戦略として最適なのか、明らかになるにはしばらく時間が必要かもしれません。
近々改定されるであろう、厚生労働省の「COVID-19診療の手引き」では、本剤がどのような位置づけで記載されるのか興味があるところです。
第4波の到来による医療機関の逼迫が毎日のように報道されている今日このごろですが、バリシチニブの正式承認によって、投与する医療機関が増加→重症患者のICU滞在日数が短縮→重症病床の逼迫状態が改善、という流れが多少なりとも生じることを期待したいと思います。
COVID-19入院患者へのバリシチニブ+レムデシビル併用は有益/NEJM
方法
本研究は8カ国67施設を通じて、成人 Covid-19 入院患者に対してレムデシビルにバルシチニブを併用する効果を評価した二重盲検プラセボ対照無作為化比較試験(The adaptive covid-19 treatment trial-2;ACTT-2)である。併用群にはレムデシビル(最長 10 日間)とバリシチニブ(最長 14 日間)を投与した。また対照群にはレムデシビル(最長 10 日間)のみを投与した。
ACTT-1と同様に毎日8カテゴリーの重症度の順序尺度(注*)が記録され、Primary outcomeは回復(カテゴリー1,2,3までの回復)までの期間と定義された。重要な副次的評価項目は 15 日目の臨床状態とした。
(注*) 1. 退院(活動制限なし) 2. 退院(活動制限and/or在宅酸素あり) 3. 治療が不要な入院4. 治療が必要な入院(酸素なし) 5. 酸素吸入が必要な入院 6. 非侵襲的換気又は高流量酸素が必要な入院 7. 侵襲的人工呼吸器or ECMOが必要な入院 8. 死亡
結果
2020年5月〜7月の間に1033 例がランダム化された(515 例が併用群、518 例が対照群)。バリシチニブの併用投与を受けた患者は、回復までの日数(中央値)が 7 日(95%信頼区間 [CI] 6〜8)であったのに対し、対照群では 8 日(95% CI 7〜9)(回復率比 1.16、95% CI 1.01〜1.32、P=0.03)だった。副次評価項目である15 日目の臨床状態改善のオッズが 30%高かった(オッズ比 1.3、95% CI 1.0〜1.6)。高流量酸素投与または非侵襲的人工呼吸管理を受けていた患者では、回復までの日数の中央値は併用群で 10 日。対照群で 18 日であった(回復割合比 1.51、95% CI 1.10〜2.08)。ステロイドの使用が許可された223人の患者では、回復割合比は1.06(95% CI 0.75〜1.48)であった。28 日死亡割合は併用群で 5.1%、対照群で 7.8%であった(死亡のハザード比 0.65、95% CI 0.39〜1.09)。重篤な有害事象の頻度は併用群のほうが対照群よりも低く(16.0% 対 21.0%、差 -5.0 パーセントポイント、95% CI -9.8〜-0.3、P=0.03)、新たな感染症についても併用群の方が低かった(5.9% 対 11.2%、差 -5.3 パーセントポイント、95% CI -8.7〜-1.9、P=0.003)。
国内外で実施された臨床試験において、バリシチニブとレムデシビルを併用した場合、レ.
日本イーライリリーは、SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)による肺炎に対する治療薬として、適応追加承認を取得した経口ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤バリシチニブ(商品名:オルミエント)に関するプレスセミナーを開催した。バリシチニブは関節リウマチ、アトピー性皮膚炎の治療薬として承認されている薬剤。
今回のセミナーでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への適応拡大で行われた臨床試験の経過、使用上の詳細について説明が行われた。
はじめに齋藤 翔氏(国立国際医療研究センター 国際感染症センター 総合感染症科)が、「新型コロナウイルス感染症の病態、治療の現状と課題 JAK阻害剤の臨床的位置づけ」をテーマに、バリシチニブの臨床的な位置付けや使用上の注意点などを説明した。
COVID-19の病態はすでに広く知られているようにウイルス応答期と宿主炎症反応期に分けられる。そして、治療では、軽症から中等症では抗ウイルス薬のレムデシビルが使用され、病態の進行によっては抗炎症治療薬のデキサメタゾンが併用されているが、今回追加適応されたバリシチニブは中等症以上で顕著にみられるサイトカインストームへの治療として期待されている。
バシリニブの適応追加では、米国国立衛生研究所(NIH)傘下の国立アレルギー感染症研究所(NIAID)主導によるACTT試験が行われた。特にACTT-2試験は、他施設共同・アダプティブ・無作為化・二重盲検・プラセボ対照・並行群間比較検証試験で実施され、COVID-19と診断された成人入院患者を対象にバリシチニブとレムデシビル群(n=515)とプラセボとレムデシビル群(n=518)を比較し、有効性および安全性を評価した。その結果、有効性として回復までの期間はバリシチニブ群で7日に対し、プラセボ群で8日だった(ハザード比[95%CI]:1.15[1.00-1.31] p=0.047)。また、無作為化後14日時点の死亡率では、バリシチニブ群で8例に対し、プラセボ群で15例だった(ハザード比[95%CI]:0.55[0.23-1.29])。
安全性では、グレード3(高度)または4(生命を脅かす可能性のある事象)の有害事象はバリシチニブ群で41%、プラセボ群で47%であり、重篤な有害事象ではバリシチニブ群で15%、プラセボ群で20%だった。また、死亡に至った有害事象はバリシチニブ群で4%、プラセボ群で6%だった。
次に使用上の注意点として禁忌事項に触れ、「結核患者」、「妊婦または妊娠の可能性のある女性」、「敗血症患者」、「透析患者」などへは事前の問診、検査をしっかり実施して治療に臨んでもらいたいと説明した。
次に「オルミエント錠、SARS-CoV-2による肺炎への適応追加承認と適正使用について」をテーマに吉川 彰一氏(日本イーライリリー株式会社 バイスプレジデント・執行役員/研究開発・メディカルアフェアーズ統括本部)が適応承認までの道程と適正使用について説明した。
もともと本剤は関節リウマチ、アトピー性皮膚炎の治療薬として使用されていたが、COVID-19の流行とともに治療薬の探索が急がれていた。その中で「Benevolent AI社が、バリシチニブがCOVID-19の治療薬になる可能性があるとLancetに発表、この報告後、での薬理作用が確認され、2020年5月にACTT試験が開始された」と語った。
作用機序は、COVID-19による急性呼吸窮迫症候群について、JAK-STATサイトカインシグナル伝達を阻害することで、増加したサイトカイン濃度を低下させ、抗炎症作用を示すという。
追加された効能は、SARS-CoV-2による肺炎(ただし酸素吸入を要する患者に限る)。用法および用量は、成人にはレムデシビルとの併用においてバリシチニブ4mgを1日1回経口投与し、総投与期間は14日間。本剤は、酸素吸入、人工呼吸管理または体外式膜型人工肺(ECMO)導入を要する患者を対象に入院下で投与を行うものとされている。また、経口投与が困難な場合、懸濁させた上で経口、胃瘻、経鼻または経口胃管での投与も考慮できるとしている。
最後に吉川氏は同社の使命である「『世界中の人々のより豊かな人生のため、革新的医薬品に思いやりを込めて』を実現し、患者の豊かな人生へ貢献していきたい」と語り講演を終えた。
●参考文献
Implication
主要評価項目である回復までの期間は全体で1日と大きな影響はないようにみえた。しかし、副次評価項目は多重比較の調整がなされていないものの、挿管や酸素投与の回避、人工呼吸期間の短縮がみられている。血栓や感染の重大な合併症に関しては評価に必要なサンプル数ではないものの、バリシチニブ併用群で少ない傾向にあった点は注目に値する。
また、本研究は免疫抑制薬であるステロイド使用が交絡となりうるが、ステロイド併用が事前に規定されている点、ステロイド併用が死亡割合を改善した研究(RECOVERY)の発表前に行われたこともあり実際のステロイド使用は10%程度だったため大きな影響はないと考える。
バリシチニブはステロイドよりも選択的に免疫を抑制することで副作用の面でも優れていることが期待される。以上からバリシチニブ併用は非常に有望な治療選択となりうる。しかし、バリシチニブは薬価が高く一般化可能性に問題があり、ステロイドと費用対効果を含めた比較やステロイドも併用するかなどまだ解決すべ課題がある。今後の検証に期待する。
成人 Covid-19 入院患者に対するバリシチニブとレムデシビルの併用
エボラ出血熱の治療のために、ギリアド・サイエンシズ社に開発された抗ウイルス薬です。
5月7日に日本で新型コロナウイルス感染症治療薬として認められ、アメリカでは5月1日に緊急使用許可が出されています。
副作用としては、急性腎障害、肝機能障害があります。
バリシチニブとレムデシビルによる併用療法を行ったグループとレムデシビルとプラセボを投与したグループの回復までの期間の中央値を比較したところ、前者の方が1日短く、15日目の臨床状態の改善のオッズは30%高い結果となりました。また、登録時に高流量酸素や非侵襲的人工呼吸を受けた患者さまでは、併用療法で回復までの期間の中央値が8日短くなりました。
レムデシビル、デキサメタゾンもしくはバリシチニブの継続使用の推奨、また ..
厚生労働省の専門部会は21日、米イーライリリー社の関節リウマチ治療薬「バリシチニブ」(商品名・オルミエント)を新型コロナウイルス感染症の治療薬として承認することを了承した。抗ウイルス薬「レムデシビル」を併用して投与する。国内で使用が認められる新型コロナ治療薬は3例目となる。
▫デキサメタゾン(レムデシビルとの併用療法が使用できない、又は利用不.
日本感染症学会(理事長:舘田 一博氏[東邦大学医学部教授])は、2月1日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬について指針として「」をまとめ、同会のホームページで公開した。
本指針は、COVID-19の流行から約1年が経過し、薬物治療に関する知見が集積しつつあり、これまでの知見に基づき国内での薬物治療に関する考え方を示すことを目的に作成されている。
現在わが国でCOVID-19に対して適応のある薬剤はレムデシビルである。デキサメタゾンは重症感染症に関しての適応がある。また、使用に際し指針では、「適応のある薬剤以外で、国内ですでに薬事承認されている薬剤をやむなく使用する場合には、各施設の薬剤適応外使用に関する指針に則り、必要な手続きを行う事とする。適応外使用にあたっては基本的にcompassionate useであることから、リスクと便益を熟慮して投与の判断を行う。また、治験・臨床研究の枠組みの中にて薬剤を使用する場合には、関連する法律・指針などに準じた手続きを行う。有害事象の有無をみるために採血などで評価を行う」と注意を喚起している。
抗ウイルス薬などの対象と開始のタイミングについては、「発症後数日はウイルス増殖が、そして発症後7日前後からは宿主免疫による炎症反応が主病態であると考えられ、発症早期には抗ウイルス薬、そして徐々に悪化のみられる発症7日前後以降の中等症・重症の病態では抗炎症薬の投与が重要となる」としている。
抗ウイルス薬などの選択について、本指針では、抗ウイルス薬、抗体治療、免疫調整薬・免疫抑制薬、その他として分類し、「機序、海外での臨床報告、日本での臨床報告、投与方法(用法・用量)、投与時の注意点」について詳述している。
〔抗ウイルス薬〕
・レムデシビル(商品名:ベクルリー点滴静注液100mgなど)
・ファビピラビル
〔抗体治療〕
・回復者血漿
・高度免疫グロブリン製剤
・モノクローナル抗体
〔免疫調整薬・免疫抑制薬〕
・デキサメタゾン
・バリシチニブ
・トシリズマブ
・サリルマブ
・シクレソニド
〔COVID-19に対する他の抗ウイルス薬(今後知見が待たれる薬剤)〕
インターフェロン、カモスタット、ナファモスタット、インターフェロンβ、イベルメクチン、フルボキサミン、コルヒチン、ビタミンD、亜鉛、ファモチジン、HCV治療薬(ソフォスブビル、ダクラタスビル)
・レムデシビルのRCTを表化して整理
・レムデシビルの添付文書改訂のため肝機能・腎機能を「定期的に測定」に変更
(抗体治療薬の項目追加)
・バリシチニブ+レムデシビルのRCT結果を追加
・トシリズマブのREMAP-CAP試験などの結果を追加
・シクレソニドの使用非推奨を追加
バリシチニブとレムデシビルの併用療法を使用可能とすることである。 2.5 ..
新型コロナウイルス感染症による肺炎の場合、成人はレムデシビルとの併用において、バリシチニブとして4mgを1日1回経口投与します。総投与期間は14日間までです。
[PDF] COVID-19中等症Ⅱに対するレムデシビル,デキサメタゾン
●透析患者さままたは末期腎不全患者さま、リンパ球数が200/mm3未満の患者さまには禁忌とされています。プロベネシドと併用する際にはバリシチニブ錠を2mg1日1回に減量するなど、用量に注意が必要です。
[PDF] COVID-19 の薬物治療ガイドライン version 4 1
V.バリシチニブ(JAK阻害薬)
COVID-19と診断された入院患者1,033人を対象にレムデシビル(10日以内)に加えて,バリシチニブ(14日以内)またはプラセボ(対照)を投与したRCTでは,バリシチニブを投与された患者の回復までの期間中央値は7日,対照群では8日であり(回復率比,1.16;95%CI,1.01~1.32;P=0.03),15日目の臨床状態の改善オッズは30%高かった(オッズ比,1.3;95%CI,1.0~1.6).また登録時に高流量酸素または非侵襲的人工呼吸を受けた患者の回復までの期間は,併用療法で10日,対照群で18日であった(回復率比,1.51;95%CI,1.10~2.08).デキサメタゾンとバリシチニブの優位性の検証は現在行われているところである.
すでにデキサメタゾンなどのステロイドを投与されている患者に追加でバリシチニブを投与することで予後を改善する効果もあると考えられている.侵襲的人工呼吸を行っていないCOVID-19の入院患者1,525名を対象とした多国籍プラセボ対照無作為化試験のプレプリントの報告では,標準治療にバリシチニブを追加することで28日後の死亡率が低下した(プラセボ群13.1%に対して8.1%,HR0.57,95%CI0.41~0.78).
なお後述のトシリズマブとの併用については効果・安全性は不明のため推奨されない.
[PDF] COVID-19中等症Ⅱへのレムデシビル,デキサメタゾン
2019年末に中国で確認後、急速に全世界に拡散した新型コロナウイルス(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2:SARS-CoV-2)は、今日に到るまで1億7000万人が感染し350万人が死に到る歴史に残るパンデミックとなっている。このSARS-CoV-2による新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019:COVID-19)の治療法開発には多くの研究者と企業が総力をあげてこの一年取り組んできた。抗ウイルス活性が示唆される既存薬のrepositioningの試行に加え、重症例での病態への関与が示唆される過剰免疫の抑制についても各種抗炎症薬の効果を検証する臨床試験が実施されている。しかし、2021年4月時点、本邦でCOVID-19治療薬として承認されているものは、抗ウイルス薬のレムデシビルと、抗炎症薬であるデキサメタゾン、バリシチニブの3剤のみである。
[PDF] COVID-19に対する薬物治療の考え方 第14版
使用するアデノウイルスそのものに毒性があり、発熱や風邪の症状がワクチンを投与した人ほぼ全員に出現していることが分かっています。(オックスフォード大)
また過去の遺伝子治療で肝機能障害で死亡した方もいるので、慎重に投与する必要があります。
[PDF] COVID-19 の薬物治療ガイドライン version 5 1
入院中の酸素投与が必要な患者に対するデキサメタゾンの投与は死亡率を低下させた(RECOVERY試験[4])ため、このような患者にはデキサメタゾン6mg、10日間(退院するまで)の投与を行う。酸素投与を行う必要がない場合のデキサメタゾン(6mg、10日間)の使用は、むしろ害の方が大きい可能性が同時に示されており、使用すべきではない。これは、酸素不要群ではアウトカムが悪い傾向があるためであり、その期間は発症から中央値6日(3~10日)であった[4]。酸素投与開始時にデキサメタゾンを使用する場合は、抗ウイルス薬であるレムデシビルとの同時併用が望ましい可能性があるが[5]、宿泊療養施設や外来ではレムデシビルは使用できないため、現実的にはデキサメタゾンの単独使用になるだろう。繰り返しになるが、酸素需要がない状況で、発熱が持続しているなどの理由でデキサメタゾンを使用してはならない。
[PDF] COVID-19に対する薬物治療の考え方 第8版
IV.デキサメタゾン
重症COVID-19患者は,肺障害および多臓器不全をもたらす全身性炎症反応を発現する.コルチコステロイドの抗炎症作用によって,これらの有害な炎症反応を予防または抑制する可能性が示唆されている.
英国で行われた入院患者を対象とした大規模多施設無作為化オープンラベル試験では,デキサメタゾンの投与を受けた患者は,標準治療を受けた患者と比較して死亡率が減少したことが示された.
この研究は6,425人の参加者を対象に行われ,デキサメタゾン群2,104人,対照群4,321人が参加した.デキサメタゾン群の参加者の21.6%,対照群の24.6%が,試験登録後28日以内に死亡した(RR0.83;95%CI,0.74~0.92,P<0.001).予後改善効果は,無作為化時に侵襲的人工呼吸管理を必要とした患者で最大であり,また登録時に酸素投与を必要とした症例でも予後改善効果がみられた.しかし,登録時に酸素投与を要しなかった集団では予後改善効果はみられなかった.本邦ではデキサメタゾンが使用された報告はないものの,プレドニゾロンなど他の種類のステロイド薬が使用された症例報告は散見される.なお,デキサメタゾンは現在の承認の範囲内で新型コロナウイルス感染症に対しても使用可能である.
なお,ステロイドであるデキサメタゾンをウイルス増殖期に投与すれば理論的にはむしろ予後を悪化することも懸念されることから,現時点では酸素投与が必要な中等症2の時点で投与を開始することが一般的である.